2019年5月号
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地域特集 香川県

全国にアートフェスが乱立、瀬戸内国際芸術祭が人気を集める理由

大崎 龍史(瀬戸内サニー 代表取締役/総合メディアディレクター)

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「瀬戸内」が熱い。今、瀬戸内・香川県では、インバウンドを含む観光やアート、地域づくりといった文脈で多くの熱気のある取り組みが生まれているのだ。その中心にあるのが「瀬戸内国際芸術祭」。その成功の秘密に迫り、マーケティングの観点から紐解く。

3年に1度、瀬戸内海の12の島と2つの港を舞台に開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。2019年は4月26日に開幕
Photo by 663highland

芸術祭といっても必ずしも明るいニュースばかりではありません。ここ数年で中止を発表した地域もあり、芸術祭や地域アートは淘汰の時代に入り始めました。その中で瀬戸内国際芸術祭(以下、瀬戸芸)は成功として知られていますが、その要因は何なのか。

私は、現在香川県を拠点としたインターネットメディア「瀬戸内サニー」を運営する会社を経営しており、企業・自治体のマーケティングやPRの支援に関わる傍ら、大学生のときから瀬戸芸に参加し、海外アーティストのサポートなどもしてきました。そのマーケティングやPRの観点を軸足としながら、僭越ながら、瀬戸芸を通じて学んだ香川県地域の文化芸術の歴史的変遷も踏まえた上で、その成功要因を紐解いていきます。

10年後も変わらない
強固な事業コンセプト

まず、瀬戸芸が成功した理由として一つ目に挙げられるのが、その強固な「コンセプト」です。古来、瀬戸内海は交易の拠点として、様々な文化が行き交う地域として知られていました。にもかかわらず、戦後の高度経済成長のために、人を都市に奪われ、農業は非効率だという理由で止めさせられ、東京一極集中という近代化の犠牲になってきました。

結果、瀬戸内は、豊島の産業廃棄物問題や大島のハンセン病患者隔離問題といった、まさに近代化の問題を抱える地域になってしまったのです。だからこそ、瀬戸内の島々が活力を取り戻し、島の人々、島のおじいちゃんやおばあちゃんの笑顔を見るために芸術祭を開催したい。それが開催の背景になり、「海の復権」という言葉がコンセプトとして掲げられ、「島のおじいさんおばあさんの笑顔を見たい」というキャッチフレーズが添えられました。

地域でのイベント施策やマーケティング施策は、「手段の目的化」が起こりがちです。実際のところ、流行しているからという理由でスタートしている地域が多く見受けられます。もしくは、アーティストの人たちの自己実現の場として、「アーティストのための芸術祭」になっているように感じることもしばしばあります。

そうではなく、「地域固有の課題を明確に定義し、その課題に対しての解決策が芸術祭であり、それを実現するために全体コンセプトを掲げ、さらに分かりやすく生活者の言葉(キャッチフレーズ)に落とし込む」。言葉にすると簡単そうに見えますが、10年経っても変わらない普遍性の高いコンセプトに落とし込むには相当な時間がかかります。

その上で、「海の復権」や「おじいさん、おばあさんの笑顔を見たい」という言葉は、総合ディレクターの北川フラム氏の講演や大手メディアを通じて繰り返し使われています。結果、コンセプトがメディアや人の言葉を通じてじわじわ広がり、それに沿って人々は瀬戸芸に関わるようになりました。

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