触感を伝えるVRデバイス 5Gでリアルタイムな体験シェアを

自宅にいながら、アバターを操作して遠隔地の景色や音を楽しみ、触感のフィードバックも受けられる。そんなVRデバイスを開発するベンチャー企業のH2Lは、2019年1月にNTTドコモと連携。ドコモのプログラムに参加する様々なパートナーとも協力して、5Gを用いた体験のシェアに取り組む計画だ。

岩崎 健一郎(H2L 代表取締役)

2012年に創業したH2Lは、視覚・聴覚に次ぐ第三のメディアとして、身体の体験を共有する「Body Sharing」の実現を目指して事業を進めている。離れた場所にいる人々が体験を共有するには、大量の情報をリアルタイムでやり取りしなければならない。同社の目標を達成するためには、5Gのような新しい通信の仕組みが不可欠だ。

手の感覚を共有するデバイス

H2Lは、東京大学大学院出身の玉城絵美氏(現在、早稲田大学准教授)と岩崎健一郎氏(現在、同社CEO)の2名で共同創業された。H2Lの最初の製品である「PossessedHand」は、玉城氏の研究成果を製品化したものだ。腕に巻いた2本のベルトから、前腕の筋肉に電気刺激を与え、手指の動きを制御する装置で、指の曲げ伸ばしなどの動作が可能になる。コンピュータによって外部から手の動きを制御できることから、和楽器の琴の演奏を支援するアプリケーション等が開発されている。また医療機器メーカーと共同で、PossessedHandを応用したリハビリ装置の検討を進めているところだ。

「医療への応用は多くの方からご要望を頂いたのですが、製品化までのハードルが高く、ようやくスタートラインに立った所です。創業時に、この技術をできるだけ早く、多くの方に広めたいという思いを強く持っていたため、より大きく展開できる分野を探し、バーチャルリアリティ(VR)装置の開発に着手しました」と岩崎氏は振り返る。娯楽から教育、ビジネス用途まで、幅広い市場が広がるVRで勝負しようと考えたという。 

そして製品化したのが、触感型のゲームコントローラーである「UnlimitedHand」。視覚・聴覚に触感を加えることで、より没入感の高い経験を得ることを目指した製品だ。ゲームを操作するインプット機能と、ゲームからのフィードバックを感じられるアウトプット機能を備えている。このコントローラーは、前腕に巻くバンドに埋め込まれた筋変位センサーでユーザーの筋肉の動きを検出し、VR空間に伝える。VRからのフィードバックは筋肉への電気刺激でユーザーに届くしくみになっている。2015年に、製品化の資金をクラウドファンディングサイトのKickstarterで募集したところ、国内外から資金が集まり、目標額は1日で達成。締め切り時には目標の4倍の金額を集めていた。

2018年には、さらに多くのユーザーへの普及を目指した製品「FirstVR」を発売した。これは、スマートフォンと組み合わせて、VR/ARアプリケーションを手で操作することができる製品だ。前腕部に装着し、手と指の動きを読み取るコントローラーと、スマートフォンをセットするゴーグルがセットで価格は9980円。FirstVRを使って魔法使いになるゲームなど、対応アプリも公開されている。筋肉の動きの検出に光学式センサーを用いているため、汗をかいても支障はない。このことから、ヨガやエクササイズの指導にも適用できると岩崎氏は考えている。

「まずは廉価にデバイスを普及させて、そこから取得できるデータを活用したビジネスを展開したいと考えています」と同氏は話した。

UnlimitedHandとFirstVR。UnlimitedHandは、仮想空間の出来事を装着者の腕にフィードバックする。FirstVRは、自身の腕をコントローラーに、直感的にVRコンテンツを楽しむことができる製品

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