2019年3月号

横浜魅力づくりプロジェクトレポート

共創で水辺空間に魅力を創出 「歩きたい」空間をデザインする

月刊事業構想 編集部

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大都市において、川の利用は利水・治水が中心であり、注目される機会は少ない。かつて、「まち」と「ひと」をつなぐ存在だった川は、いつしか存在感を失いつつあった。横浜市では川と「まち」と「ひと」の関係を編み直し、新しい価値・魅力を創出しようとしている。

Ⓒtadashan

水辺の未来を創造する

横浜市中心部を流れる大岡川。春には満開の桜が美しい景観と賑わいを生み、1年を通してSUP(Stand Up Paddleboard)などのアクティビティを楽しむ人が訪れる。

実はこの大岡川流域は、アーティストの制作拠点であり、アートフェスティバルが開催されるなどアートの街という側面も持つ。このように多様な魅力を有するエリアであるが、川で繋がる様々な関係者の間での交流が少なかったことから、効果的に魅力を発信できずにいた。こうした中、水辺に興味を持つ市民や地域内外の企業、そして行政が連携し、『クリエイティブ』をキーワードに、水辺とまちが一体となった新しい賑わいを創出する挑戦が始まっている。

この挑戦の象徴(エンジン)として昨年10月から11月にかけて実施されたイベントがイルミネーションイベント「大岡川ひかりの川辺」だ。横浜市と事業構想大学院大学が主催し、地域の活性化を願う様々なプレイヤーと連携して実現した。

演出を手掛けたのは、SPOON 谷田光晴氏。谷田氏は、演出にかけた想いについて次のように説明する。

「このプロジェクトに向き合う時にまず、ライトアップによって、新しい街の魅力を感じてもらいたいと思ったのと同時に、他で見たことのないものを創りたいと思いました。

通常のライトアップとなると、LEDの電飾を使ったものが多く見られますが、LEDを使ったライトアップは、木々に電飾を巻き付けるものが多く、明るい時の見た目が美しくありません。新たに光の要素を追加し、輝かせているというよりも、日常と変わりないように見えるいつもの川が、突然輝きだすという風に感じてもらいたいと考えて、ムービング照明と、レーザーを使った演出を採用しました。地域の方や見て頂いた方に、見慣れたこの川が美しく輝きだす瞬間を目撃していただくという体験を創り出すことができました。来ていただいた皆様の中にその体験が記憶として残して頂くことができたと思います。

このようなプロジェクト、取り組みが形や手法を変えながらでも続いてゆくことで、地域の人々が関心を川に寄せていただくきっかけとなり、この川と周辺環境が様々な人、文化の交流の場所になっていけば素晴らしいと思います」

図1 大岡川・中村川の位置関係

外部のプレイヤーも巻き込む

横浜は、2020年までに、ラグビーワールドカップ2019™や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会といったスポーツイベントや第7回アフリカ開発会議(TICAD7)といった国際会議など大規模イベントを控え、国内外からの訪問者数の増加が見込まれる。こうした中、いかにして、横浜みなとみらい21地区や中華街以外のエリアまで足を運んでいただけるようにするか、歩きたくなる水辺空間を形成できるかが重要となる。

その際、ポイントとなるのは、世界中が同質化する中、地域のアイデンティティにもなりうる新しい魅力をつくるためには、行政がどの地域でもできる施策を実行するのではなく、地域に思い入れのある方々が主体となることである。それは、「民」ならではの柔軟な行動と思考で、地域資源をいかした新しいクリエイティブを生み出すことにつながる。大岡川流域では、「アート」「環境浄化」「運河活用」「SUP」「食」「不動産」など、地域の様々なプレイヤーが同じ方向を向いて、魅力的な地域を作っていこうという土壌が作られつつある。

横浜市と事業構想大学院大学では、「横浜の水辺を活かした新たな魅力創出事業に関する基本協定」を2017年12月に締結し、2020年度まで大岡川流域の地域活性化、魅力創出に取り組んでいる。2019年度は「食コンテンツ」や「アクティビティ」も含めた総合的な魅力づくりにも力を入れていく計画だ。地域が中心であることは当然ながら、水辺空間を活用して地域活性に取り組みたいと考える企業と共創しながら、地域づくりを進めていく。

図2 横浜市と事業構想大学院大学が取り組む事業のスキーム

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