厚木市の働き方改革 デジタルペーパーで事務の効率化へ

働きやすい職場づくりを進める厚木市は、2018年にデジタルペーパーを導入。50台を幹部職員に貸与し資料の作成・印刷・配付に係るコストの削減を目指している。ペーパーレスによる効率化を示すデータが集まり始めており、対象の拡大も検討中だ。

小林常良 厚木市長

神奈川県厚木市は、東名高速道路など交通の要衝として発展したまちだ。自然の豊かさと都会暮らしの便利さのバランスが取れていることから、ファミリー層にも人気がある。子育て支援策が充実していることもあり、2018年12月に発表された「日経DUAL 共働き子育てしやすい街ランキング2018」では全国3位にランクインした。

住民向けの子育て支援策と並行して、厚木市では、市職員のライフ・ワークバランスを重視している。「市職員がバランスの取れた生活を送ることが、ひいては市民サービスの向上につながるからです。」と、厚木市長の小林常良氏は話す。

この取り組みでは、まず2017年度、市長、副市長を始めとする課長職以上の職員が「あつぎスマート・ワーク宣言」を発表。これは、上司が率先して働き方を改革し、職務を効率よく進め、働きやすい職場にすることを目指したものだった。これにより、2017年度は前年度に比べて、時間外勤務が1万5000時間減少した。2018年度からは、現場の担当職を含む市役所全体で、それぞれの目標を「宣言」。個人レベルで、仕事と生活の充実を考えるきっかけとなっているようだ。

デジタルペーパーで人件費を節約

市では、行政事務の効率化に向けて、新しい技術やデバイスを積極的に活用することも始めている。2018年秋からは、紙の代替となるデジタルペーパー端末の利用を開始した。この端末は、A4サイズで重さは349グラムと、同サイズの紙のノートとほぼ同じだ。PDFファイルを表示させ、専用ペンを使えば書き込みもできる。まずは市役所の部長職以上の幹部職員が使用する50台を導入し、庁内の会議で利用を始めている。

会議時に厚木市の幹部職員の手元にあるのは、紙の資料ではなくデジタルペーパーだ

デジタルペーパー端末導入の目的は、会議の際に準備する配付資料作成の手間を減らすことにある。議題によっては莫大な量になる配付資料を端末で共有できれば、印刷や配付に係る市職員の仕事を減らせる。紙・インクの使用量や廃棄コストも少なくなり、環境にもよい。

紙の使用量を減らすために、タブレット端末を利用している企業や自治体は多い。あえてデジタルペーパーを使うことにした理由について、小林氏は、(1)紙のように読み書きでき、スムーズに移行できること、(2)持ち運びしやすい軽さ、(3)バッテリー寿命が長く、半日にわたる会議など長時間の使用に耐えること、(4)紙の代替という目的が明確に打ち出せること―――の4点を挙げた。

今回50台というまとまった数を一気に導入することから、製品の信頼性も重視した。ソニーは2013年からデジタルペーパーを販売しており、他自治体の例では栃木市での採用実績があることも、選定を後押しした。栃木市では、介護認定業務のペーパーレス化のため、デジタルペーパー60台を2017年に導入している。

市でデジタルペーパーの利用を実際に開始したのは、2018年10月から。市役所の部長級以上の幹部職員に貸与している。開始から約3カ月間の実績を算出したところ、コスト削減効果は40万円を上回った。これは、紙代とプリント代、資料の印刷などの業務を行う人件費が含まれている。さらに、市では年度末にかけて、次年度予算の査定など大量の資料を用いる会議が行われる。これらをデジタルペーパーに切り替えれば、より大きな効果が見込める。

小林氏は「導入時、年間約200万円のコスト削減効果を見込んでおり、おおむね目標通りの効果が出ています」と話した。デジタルペーパーの導入に投じた事業予算は3年で十分に回収できる予定だ。

幹部職員から進めるペーパーレス

市では、各種の計画書類の電子化も同時に進めている。これに伴い、幹部職員は会議以外の日常業務でも端末を活用するようになった。「デジタルペーパーの導入は、幹部職員の意識を変える効果もありました。今では、紙の資料を配付すると『デジタル資料ではないの?』という声が上がるほどになっています」と小林氏は話す。

市では、デジタルペーパーの利用状況を半年ほどモニターし、2019年4月からは利用の幅を広げていく考えだ。現在は部長職以上に限定されている貸与の幅を広げることも視野に、デジタルペーパーの効果的な用途を探っているところだ。市の政策立案に意見する、分野ごとの審査会や審議会など、市職員だけでなく市民も参加する会議での利用などが検討されている。市政の効率化や、環境負荷の軽減に市が力を入れていることを、市民に伝える機会ともなる。

紙の資料に関わる人手・時間・コストは少なくない。会議前に配付資料を担当部署から集約し、参加予定者数に予備を見込んで印刷、それらをさらに取りまとめて机上配付。ミスや差し替えがあれば取り急ぎ追加印刷を手配しなければならない。終了後は、資料に記載の情報の重要度や個人情報に適した廃棄を手配し、個人毎には手書きメモを残すための念のためのスキャンもある。業務効率化の一手としてのペーパーレス化は検討に値するテーマだ。

 

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