2019年2月号

北海道胆振東部地震 復興の先へ

北海道観光、V字回復の理由 北海道銀行会長に聞く震災復興

堰八 義博(北海道観光振興機構会長、北海道銀行代表取締役会長)

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9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、宿泊施設に多数のキャンセルが生じるなど、観光産業にも深刻な影響があった。北海道観光振興機構の堰八義博会長(北海道銀行会長)に、観光復興への取り組みと、北海道観光のさらなる飛躍に向けた挑戦を聞いた。

堰八 義博(北海道観光振興機構会長、北海道銀行代表取締役会長)

――胆振東部地震の北海道観光業への影響は。

直接的な地震被害を受けた観光地はほとんどなく、ライフラインの復旧も早かったのですが、全道で停電が発生したことによる風評もあって、宿泊施設などで大量のキャンセルが発生しました。観光被害対策連絡会(事務局:北海道庁)のとりまとめでは、9月末時点での観光消費額総体の影響額は推計356億円にのぼります。

また、今回の地震は観光ハイシーズンに発生し、多くの観光客の方にご不便・ご不安をおかけしました。災害時の観光客への対応という課題も浮き彫りになりました。観光立国を目指す日本にとっては、課題を総括し、外国人を中心とした観光客への災害時の情報提供や、避難・安全確保などの体制整備に役立てることが大切です。北海道ではすでに道運輸局を中心とした協議会が立ち上がり、対策をとりまとめ、2019年3月には実地訓練を行う予定です。

11月の国内宿泊客数は
前年を上回る

――観光復興に向けた取り組みと、その効果はいかがでしょうか。

当機構では風評の払拭のために、地震後にいち早く特設ホームページを開設して「元気です北海道」をキャッチフレーズに正確な情報発信を開始しました。国内外のエージェントやメディアにも直接説明や招聘などを実施し、不安解消に努めて参りました。

風評払拭や旅行需要喚起に向け、「元気です北海道」をキャッチフレーズにキャンペーンを実施

また、国や北海道庁にも、観光復興のために迅速かつ様々な対応をして頂きました。やはり一番大きかったのは「北海道ふっこう割」です。国と道庁から合計83億円の予算を計上して頂き、北海道での1泊以上の旅行商品及び宿泊を最大70%補助するもので、対象商品は10月1日から発売しています。これまで国内エージェント223社に合計47億円、海外188社に32億円の交付を決定しました。

その効果は目に見えて現れています。地震直後の9月は、観光客数は前年比で20%以上落ち込みましたが、日本旅館協会北海道支部連合会の調査では、11月の国内宿泊客数は対前年比102.4%まで回復しています。外国人観光客への「ふっこう割」効果が顕在化するのは12月~2月の見込みですが、こちらも宿泊施設へのヒアリングでは前年を上回る予約を頂いているようです。

北海道の観光入込客数は2017年度に過去最多の5,610万人を記録し、外国人観光客数も前年度比21.3%増の279万人と過去最高となりました。北海道観光が絶好調なタイミングでの地震は大変ショッキングな出来事でしたが、「ふっこう割」効果などで、2018年度の観光入込客数はほぼ前年度並みを確保できると見ています。

「歴史」「学び」を観光に活用

――北海道観光の可能性や、機構の取り組みを教えて下さい。

観光産業は北海道経済のリード役であり、欠かせない存在です。

当機構は2017年11月に全道をエリアとする「広域連携DMO」として観光庁から登録を受け、2018年3月には「第3期中期事業計画」を策定し、①満足度の高い観光地づくり、②戦略的な誘客の促進、③組織力の強化、の3つの柱で事業を推進しています。とくに海外の誘客については、対象市場の特性や成熟度に応じたプロモーションを展開して参ります。

北海道の観光資源といえば「大自然」が真っ先に思い浮かぶと思います。消費単価の高いアドベンチャートラベルや、欧米を中心に人気のバードウォッチングなど、自然という資源を活かせるツーリズムを提案していきます。豊頃町の「ジュエリーアイス」や美瑛の「青い池」、知床斜里の「天に続く道」など、観光客が自ら発掘し、発信してくれる自然資源も沢山あります。

ただ、自然以外にも北海道には未開拓の観光資源が多数存在します。例えば、「歴史文化」や「学び」を観光に取り入れることは大変有望だと思っています。白老町では2020年のオープンを目指し、北海道の先住民族であるアイヌの伝統文化復興に関するナショナルセンター「民族共生象徴空間」(愛称ウポポイ)の整備が進んでいます。また、世界遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」も存在します。これらを活用して新たな観光ルートを確立し、北海道観光のバリエーションを増やしていきます。

観光と並ぶ北海道のもうひとつの強みは「食」です。新鮮で種類豊富な魚介類、肉、野菜、果物などが存在していますが、これらを材料とした付加価値の高い料理を満喫して頂くために、飲食事業者とも連携を深めていきます。良質な食を北海道から国内外に輸出することにも並列で取り組みます。

空港民間委託によるチャンス

――道内空港の民間委託は、北海道観光にどのような影響がありますか。

観光にとって非常にプラスになる動きです。道内には13の空港が存在し、そのうち7空港の一括民間委託が予定されており、2019年には優先交渉権者が決定します。新しい運営会社には北海道の広域観光に資するような取り組みをして頂けることを期待しています。新千歳を中核に各空港が特色を出しながら有機的に連携し、新たな路線の誘致や空港機能の拡張などに取り組むことが非常に大切でしょう。また、着陸料金がディスカウントされ、コミューター航空のような手軽な二次交通手段として飛行機を使えるようになれば、道民の生活はもちろん、観光振興や地域活性化にも繋がるでしょう。

JR北海道の赤字路線の存廃問題など、交通インフラ面の課題は存在しますが、一方で高速道路は2018年12月に余市~小樽間が開通し、2030年にはニセコに至近の倶知安まで延伸されます。これにより、札幌からほぼ1時間以内でニセコのゲレンデに立てるようになります。また、2030年度内の北海道新幹線の札幌延伸も予定されています。こうした機会を活かして、さらに北海道観光を楽しんで頂けるよう、仕掛け作りに取り組んでいきます。

――最後に改めて、北海道胆振東部地震からの観光復興に向けた意気込みをお聞かせ下さい。

2019年は、札幌市でラグビーワールドカップ2019の試合、ニセコでG20観光大臣会合が開催されるなど、北海道PRの千載一遇の好機です。これらのイベントも大いに活用しつつ、当機構としては観光事業者や自治体と連携して魅力ある観光地づくりに邁進し、地震で落ち込んだ観光産業を再生し、一層の勢いをつけて参ります。

 

堰八 義博(せきはち・よしひろ)
北海道観光振興機構会長、北海道銀行代表取締役会長
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