小舟クルーズで個人起業 大阪の水辺観光を楽しくする会社

難波津以来発展してきた水運のインフラを生かし、縦横に走る川や水路を生かしたまちづくりが進められる大阪。その豊かな水辺をめぐる多彩なクルーズを運航する御舟かもめは、旅客定員10名の小舟で大阪観光に新たな光を当てようとしている。

中野弘巳 御舟かもめ代表・オーナー兼船長(左)、吉崎かおり 同船長

かもめの船上で取材をさせてもらった。手を差し出せば触れられるほどに水面が近い。視線を上げると、水鳥がゆうゆうと羽を休めている。「ハジロです。この時期になると飛来してくる渡り鳥です」と船長の中野弘巳氏。

しばらくすると砂利運搬船が数隻通り過ぎて起こす波に小舟が揺られる。淀川につながる上流に水門があり、パナマ運河のごとく水位を調整してから旧淀川に入ってくる船だという。「淀川の川床の砂は良質で、建設用に使われるんです」。川面から見ると、ふだん気にも留めなかった風景に彩りが加わり、見える世界が変わる。「公園にふらっと寄るように、日常の中で川を感じてほしい」と、企画を担当する妻の吉崎かおり氏はクルーズの楽しみを説く。

中野氏がNHKの番組制作ディレクターの仕事を辞して、クルーズの事業を始めたのは2009年8月のこと。だが、水辺で暮らす楽しみに先にはまっていたのは吉崎氏の方だ。「勤務先の社長が中之島を望む川辺に暮らしながらボート遊びをしているのを見て、それまで嫌いだった大阪の印象ががらりと変わりました。すぐにローンで水上ボートを買って水上タクシーを始めたんです」。

たまたま、川辺の同じマンションに住む中野氏と知り合い、ボートでデートを楽しむうちに二人はやがて結婚。出産を機に吉崎氏が船から降りると聞いて「それならぼくが小舟クルーズを始める」と覚悟を決めた。

「大学では都市計画を専門にしていて、僕自身川の利用には興味を持っていました。ただ、現実にはクルーズをしようにも規制があってハードルが高い。生業としてクルーズをする人が声を挙げれば、変わるきっかけになるのではという青臭い気持ちもありました」と振り返る。

真珠の養殖作業に使用されていた小舟を、都市河川クルーズ向けに改装。デッキ、室内合わせて広さは8畳ほど

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