WILLERが新事業を生み出せる理由 「高速バス」を超えて成長

数々の革新的なサービスを開発し、成長を遂げているWILLER。代表取締役の村瀨氏は「WILLERは、バス会社ではなくマーケティングの会社」と語り、顧客の声を起点に、「移動」の新たなマーケットを創造することを目指す。

村瀨 茂高(WILLER 代表取締役)

――WILLER(ウィラー)はバスにマーケティングを持ち込み、ピンク色の高速バス『WILLER EXPRESS』や食と絶景を楽しむ『レストランバス』など、革新的なサービスを開発してきました。新サービスのアイデアは、どのように生み出されているのですか。

村瀨 私たちは、バス会社がマーケティングに力を入れているように思われがちですが、違います。そもそもWILLERは、バス会社ではなくマーケティングの会社なのです。

高速バス事業も、最初からバスを前提に考えていたわけではありません。世の中にどのような「移動」の潜在ニーズがあるのか整理してみると、新幹線や飛行機など、高速かつ運賃が比較的高い移動手段がどんどん進化する一方で、低コストで全国をスムーズに回れる仕組みは衰退していました。かつてであれば、国鉄の普通列車を乗り継いで全国を回れましたが、現在ではそれが難しくなっています。

私たちは、大都市と地方都市、もしくは地方都市同士を結ぶ低コストの交通ネットワークを進化させれば、安く移動したいという潜在ニーズを顕在化できるのではないかと考えました。そして、2006年にスタートしたのが高速バス事業です。

WILLERは、お客様の声からサービスを生み出しています。例えば「寝顔を見られたくない」という女性の声から、寝顔を隠せるフード付きシートを開発したり、「運賃が少し高くてもいいから快適性を高めたい」という声から、個室空間を備えた独立シートを開発したりと、新たなシートを次々と提供しています。

WILLERが高速バスの運行を始めて以降、女性や若者の利用が増えて市場は活性化し、高速バスの年間利用者数は大幅に増加しています。

私は、他社との競合戦略は一切考えていません。私たちが見ているのは、お客様です。お客様との信頼関係の中で、お客様が望むものを開発していく。私たちが「どんなシートが欲しいですか?」と聞くと、約2万人ものお客様がアイデアを寄せてくれます。私たちにとってお客様は、一緒にサービスを開発する「仲間」でもあるのです。

WILLERのバスは365日、1日約300便走っており、その乗車率は昼夜とも80%を超えています。それを支えているのが、私たちが持つマーケティング力とテクノロジー。運賃や発着時間の最適化、車両タイプの有効な配置など、施策の積み重ねが80%超もの乗車率につながっています。

個室空間を備えた独立シートなど、新たなサービスを次々と開発している

ピンク色の高速バス『WILLER EXPRESS』は、「移動」の新しい市場をつくり出している

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