日本郵政の新規事業 大手町の新社屋から打ち出す次のビジネス

グループ上場から3年、9月には大手町の新社屋に移転した日本郵政。日本全国をカバーする郵便・貯金・保険の3事業を維持しながら、新しい事業への進出を模索している。日本郵政の新規事業創出の戦略と社会への貢献を、長門社長が語る。

長門 正貢(日本郵政 取締役兼代表執行役社長)

――日本郵政傘下のゆうちょ銀行は、預金量日本一、国民にとって最も身近な金融機関と言えます。現在の日本の経済をどのように見られていますか。

長門 現在のGDP成長率1%超という水準は良いと思います。日本は成熟経済ですが、やはり5、6年前言われていた実質潜在成長率0.3~0.4%という水準は低すぎました。

この、現在の成長には輸出と設備投資が貢献していると見ています。特に米国と中国が好調なため、それに対応する輸出と、そのための設備投資が日本の成長のエンジンになっています。金融業を除く、日本企業の収支もよい状態が続いています。これには、為替レートも追い風になっています。円高の時は1ドル80円だったものが、現在のように110円となったのです。ドル高は輸出企業の売上・収益双方の業績に直結しますから、これはアベノミクスの一番の成果ともいえるかもしれません。

――それでは、日本経済の課題の中で、長門社長が注目しているトピックスをお聞かせください。

日本が抱える大きな問題点は、成長が長期に亘り停滞していることです。過去20年、日本のGDPは横ばいですが、米国は約4倍、中国も2011年に日本を超えるまでに成長しました。

経済成長は、人口の増加と生産性の向上によるものです。日本の人口は1億2700万人ですが、減少期に入っており、高齢化も加速しています。2050年前後には人口の37%が65歳以上になるという推計もあります。

生産性はどうかと見ると、OECDによる労働生産性の国別ランキングでは、35国中20位。1990年代半ばには世界3位だった一人当たりGDPは、2017年には25位になりました。このまま、英(24位)、仏(23位)、独(19位)の水準で踏みとどまれれば良いのですが、さらに落ちるかもしれない。世界トップの経済大国が没落した例として、17世紀のオランダの例があります。日本はその轍を踏まないようにしなければなりません。

また、日本に世界水準の大企業が残っていないのも問題です。世界の企業の時価総額ランキングを見ると、1989年には上位はほとんど日本企業が占めていたのに、2018年にはトヨタの36位が最高(2018年8月末現在)。日本企業の力が弱くなっているのは、大きな課題です。

国が全体的に内向き、保守的になっているのではないかと思います。少子化で若年層の人数が減っているせいか、若い人が昔ほど貪欲でなく、海外に出たがらない。海外に赴任する際は、欧米ならいいけれどもアジアやアフリカに行って苦労するのは嫌だという。これは銀行や商社にとっては致命的です。ぬるま湯に浸って快適に過ごしていて、気づいたらゆでガエルになっていた、という事態になりかねません。

人々が保守的になっている背景には、財政赤字の問題もあります。現在のような財政状況で、将来、年金がもらえるのか、社会保障のレベルが落ちるのではないか。寿命が延びていますから、将来への不安も大きくなります。それなら投資をして資産を増やそうとならないのは、歴史的に「日本では投資をすると損をする」というイメージがあるためです。1989年には4万円に届きそうだった日経平均は、今やっと2万円台というわけですから。

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