水産ベンチャーが活躍 養殖・流通改革で食卓に魚を取り戻す

生産量減、消費量減のダブルパンチに見舞われている日本の水産業。それでも、水産分野にIoTなどの新技術を生かそうという動きが活発化している。特に力が入るのは、養殖と流通の生産性向上だ。

世界の漁業・養殖業生産量は既に2億トンを超え、年数パーセントの割合で成長している。魚の消費量は増加し続けており、1人当たりの食用水産物の消費量は、50年間で2倍以上に増加した。

一方、日本では、1984年度をピークに漁業・養殖業生産量は減少しており、2017年度は前年比1.3%減の440万4000トンとなった。水産物の輸入量も、2001年に過去最高の382万トンとなった後、国内消費の低下に伴い減少傾向が続いている。

日本の食卓に魚を取り戻す

日本の漁業の衰退は、1970年代後半に、各国が排他的経済水域を設定したため、遠洋漁業に制限がかかったことから始まっている。しかし当時は、魚や貝などの消費は盛んで、水産物の輸入が活発だった。

食事の「魚離れ」が深刻になったのは21世紀に入ってからだ。2006年には初めて、国民一人当たりの肉の消費量が魚を上回り、以降一貫して魚の消費は減少している。2015年度には、1人が年間に消費する魚介類の量は25.8kgとなり、1960年代並みの水準になった。魚離れの要因として、水産庁は、調理の面倒さや、肉と比較した際の割高感を挙げている。

ただし、生鮮魚介類の1世帯当たりの年間支出金額と購入量を分析すると、量は減少している一方で、金額は横ばいから漸増傾向となっている。消費者の購買意欲が衰退しているわけではなく、手ごろな価格で買える魚介類が減っているため、とも解釈できる。

そこで、もう一度、日本の食卓に魚を増やす鍵になりそうなのが、養殖と流通改善だ。おいしい魚を、安定的に、購買可能な価格で供給できれば、消費は回復し、水産業の衰退にも歯止めがかかるだろう。

世界の漁業・養殖業生産量の内訳を見ると、漁船漁業生産量は、1980年代後半以降は横ばいだが、養殖業の生産量は急激に伸びている。増加する世界人口に魚介類を供給しているのは、今や養殖業だと言える。世界銀行が2014年に発表した報告書では、2030年には世界の水産物消費量の3分の2が養殖よるものになるという。

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