地域のPRはテレビで 問い直される「デジタル一辺倒」の施策
自治体のプロモーションでもデジタル指向が強まっている中で、メディア特性を踏まえた戦略構築が重要に。テレビを介した情報発信にもまだまだ生活者の反響を獲得できる事例がある。
フロンティアインターナショナルは、イベントやPR、ノベルティグッズなど各種プロモーション事業を手がけている。男性の育児参加の機運を高めるためのコンテンツ展開や、ギネス記録と連動させたPR企画なども手がけ、自治体向けでも多くの実績を持つ。
千葉氏はまず、メディア市場の近年の動向について紹介し、「2018年にはインターネット広告が地上波テレビの扱い額を超える見通し」と話した。このため自治体のプロモーションにおいてもPR動画やYoutuberやインフルエンサーの活用に関する相談が増えているのが現状だという。
動画が地上波テレビを凌駕しつつある現状の中で、しかし千葉氏は「デジタルプロモーション一辺倒でよいのか」と問い直す。デジタルプロモーション施策については、「施策ありきになっていないか。事業目的の達成に寄与しているか。単発的な施策になってしまっていないか」を振り返る必要が出てきている。
メディアの活用のあり方については、Paid(広告)、Earned(マスコミで取り上げられること)、Shared(クチコミ)、Owned(自社サイトなどでの発信)がある。効果的なPRのためには、これらを組み合わせ「発信側が情報操作できるPaid、Ownedを発信の拠点とし、そこから操作の難しいEarnedやSNSでの拡散につなげていくのが1つのスキームになるのでは」と方向性を提示した。
また、広報・PR戦略の構築に当たっては、「知られざる事実・魅力の発掘」に加え、ストーリー(情報加工)とコンテンツ作りの重要性が高まっていると指摘。その具体事例として、国立ひたち海浜公園に咲くネモフィラを「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」のFacebookに掲載し、「世界11位」というファクトをフックに、毎年5件以上のテレビ取材につなげた取り組みなどを紹介した。
千葉氏は、数多くのシティプロモーションを手がけてきた経験から、成功することの難しさを実感している。それでも、すぐに成果が出やすい手法として「既存資源からのニュースやネタの発掘とプレスリリースなどによる情報発信活動」を挙げた。「中でもテレビによるパブリシティは、放映された時の効果や反響が大きい。テレビ番組では宣伝色が強く出ることを嫌うので、非営利の自治体からの発信が好まれやすく、取り上げられやすい」とメリットにふれた。
その例として、茨城県産品メロンを人気スイーツ等と合わせ、現地のメロン狩りスポットを紹介したケースがある。これは情報番組で取り上げられ予約が殺到した。また、袋田の滝の陰に隠れあまり知られていなかった月待の滝(茨城県大子町)について、滝の裏側に入ることができ虹が撮影できるスポットとして発信したところ、こちらも情報番組で紹介され、インスタグラマーたちが急増した。
千葉氏が考える理想的なメディアリレーションサイクルは、取材担当者との良好な関係を築いておくことだ。これにより、「ネタに困っている」というような話が舞い込んでくる。「メディアに対する一方的なお願いではなく、相手のメリットも踏まえたコミュニケーションは、次につながるサイクルになっていく」と千葉氏は話す。先進的なデジタル施策を追いながらも、従来型の基本PR活動によるテレビパブリシティ等の効果も重要視していきたい点を同氏は強調した。
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