市場規模は500兆円 「マイクロ波化学」という新産業を創る

NEXTユニコーンとして注目を集める「マイクロ波化学」。同社の武器は業界の常識を覆した技術力だ。しかし、それだけではない。世界中の化学産業を変革しようという「想い」と「実行力」が、成長の源泉となっている。

吉野 巌(マイクロ波化学 代表取締役社長 CEO)

「我々の事業は、『馬車が自動車になる』ような非連続のイノベーションです。従来の延長線上にはないイノベーションであり、インフラそのものを変えていくところなので、大変と言えば大変ですね」と笑いながら話すのはマイクロ波化学代表取締役社長CEOの吉野巌氏。

同社は、電子レンジに使われる「マイクロ波」の技術を活用。実験室レベルは可能でも、大型化して事業化するのは不可能だと言われた化学業界の常識を覆し、100年変わらなかった化学産業の製造プロセスを変革している。マイクロ波化学の産業化はまだ黎明期でありながら、技術が持つ可能性に加え、500兆円とも言われる化学産業の市場規模から、同社には高い期待を寄せられている。

マイクロ波で製造することの特徴は、従来と比較して、エネルギー使用量が1/3、用地面積が1/5で済むという「省エネ」「高効率」「コンパクト」なところと、従来技術では製造困難な「新素材」をつくることができることだ。今では、着実に実績を積み重ね、自動車や医薬品、電子材料、食品化学、燃料など幅広い分野にプロセスを提供している。しかし、40年稼働させることもあるプラントへの新技術の導入は、過去の実績と信頼性が問われ、商談は困難を極めた。普通はここで挫折しかねないところ、驚くべきことに吉野氏らは、この状況を打破するために、資金を調達し、自社プラントを大阪市住之江区に造ってしまったという。

「当初、弊社が持つ技術への認知や信用はありませんでした。そこで、東洋インキ社の新聞用カラーインキの原料の『製造販売』を行うところから事業をスタート(2012年~2014年)。その後は、提携しながら『合弁、受託製造』(2015年~現在)に取り組み、最近は認知・信用の高まりを受け、最も注力したかったマイクロ波の『プロセスや装置、コアの技術提供』を行っています(2017年~現在)」。2014年には、世界最大手の化学メーカーである独BASF社にも技術が認められ、共同研究も進めている。

2014年に大阪市住之江区に立ち上げた世界初の大規模マイクロ波化学工場。マンションの一室からスタートし、資金調達の壁を乗り越え、自社工場建設までこぎつけたというから驚きだ

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