食と日本酒を楽しむ「マラソン大会」 補助金広告ゼロで5万人集客

2014年に開始した「東北風土マラソン&フェスティバル」。5回目にして来場者数は2日間で5万3,000人を記録した。補助金・広告なしで、いかに人気イベントを育て上げたのか。

今年で5回目を迎えた「東北風土マラソン&フェスティバル」。周囲21キロメートルの湖畔を巡るコースに設けられた10カ所のエイドステーションでは、東北各地のグルメや酒蔵の仕込み水が提供される

東北の食と酒を楽しむファンラン

今年3月24、25日、宮城県北部、岩手県との県境にある登米市に、県内外から5万を超える人が足を運んだ。人口8万2,000人ほどで、普段は物静かな町である登米市が溢れかえるような賑わいとなった。

観光客たちのお目当ては、「東北風土マラソン&フェスティバル」。「風土」は「フード」でもあり、周囲21キロメートルの長沼ボート場の湖畔を巡るコースに設けられた10カ所のエイドステーションでは、東北各地のグルメが一口サイズで提供される。

東日本大震災からの復興を目的に2014年にスタートしたこのイベントは毎年右肩上がりで参加者、来場者数が伸びており、今年はマラソン大会のエントリーが6,800人(うち外国人は200人超)、来場者数は2日間で5万3,000人を記録した。

仏・メドックマラソンに学ぶ

竹川 隆司(東北風土マラソン&フェスティバル 発起人会代表、副実行委員長)

自治体からの補助金を使わず、広告費もゼロというこの挑戦的なイベントを立ち上げたのが、竹川隆司氏。現在、教育系ベンチャーを率いる起業家である。

竹川氏は野村證券時代にハーバードビジネススクールに留学し、MBAを取得。ロンドン現地法人勤務を経て、30歳を迎えて「自分の手で新しい価値を生み出そう」と独立する。

それから数年後に起きた東日本大震災は東京で被災。翌月にアメリカでの会社設立を控えていたため、すぐに渡米せねばならず、現地でもどかしい想いを抱えながらニュースを眺めるしかなかった。せめて寄付をと、日本人有志中心にハーバードビジネススクールのコミュニティで数千万円を集めたが、その大金がどう使われたのか、本当に復興の役に立っているのか、実感がわかない。

この時、「復興に直接結びつく事業、かつ、持続可能な"しくみ"を作りたい」と思い立ち、頭を捻るうちに「メドックマラソン東北版」が閃いた。

メドックマラソンはフランスのメドック地方でワイン用のブドウの収穫時期にあたる9月に毎年開催されており、30年以上の歴史がある。ワイナリーを巡るコースでは走りながらワインの試飲ができるほか、現地ならではの食事が提供される。およそ8,000人のランナー枠が一瞬で完売する人気の大会だ。

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