2018年4月号

2020キャッシュレスイノベーション

地銀が構想する新ビジネスモデル キャッシュレスで地域を活性化

ビザ・ワールドワイド・ジャパン

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キャッシュレス化で地元企業の生産性を向上させ、消費者の利便性を高めようと、北國銀行ではデビットカードの取り扱いや、加盟店への端末提供を進めている。地方銀行の強みを生かした幅広い業務を展開し、北陸地域を活性化していく。

杖村 修司(北國銀行 代表取締役 専務)

地元企業の生産性向上で
win-winを実現

キャッシュレス化を進めて地域の生産性や利便性を向上させようと、北國銀行では2016年から、Visaデビットカードの取り扱いや加盟店への端末提供を行っている。発行されたカードは2年弱で10万枚を超え、加盟店には約2500台の端末が設置された。その数は今後、さらに増加する見込みだ。

キャッシュレス化推進のきっかけとなったのは、リーマン・ショック後の2009年に社内で始めた「生産性2倍運動」だ。「社内で生産性の向上に取り組む中、それを地域全体に広げていけると良いということになりました。地元企業の生産性や収益性が向上すれば、北國銀行へのメリットにもなり、ウィンウィン(win-win)を実現できるからです」

北國銀行専務取締役の杖村修司氏は、当時の状況を振り返る。地域の生産性向上に向けた取り組みでは、キャッシュレス化が1つの大きな柱となった。2013年には買い物時の支払い方法に関する検討を始めたが、日本はキャッシュレス化で海外に後れを取っていた。中でも、北陸地域は「キャッシュレス社会」とはほど遠い状況にあった。

他方で、2015年3月には北陸新幹線の金沢開業が迫っていた。これに伴い、国内外からの訪問客が増加すれば、地域のサービス業で人手不足が深刻化するとみられた。このような中で地域のキャッシュレス化を進め、現金管理の手間や人的コストを削減できれば、インバウンド効果を拡大させると同時に人手不足の改善にもつながると考えられた。

キャッシュレス化でカード支払いを導入する際に重要なのは、どこでも使える「汎用性」、その場で決済が可能な「即時性」、そして「安全性」だった。これらすべてを実現させるには、即時払いができるデビットカードを取り扱い、地域の店舗に様々な種類のカードが使える端末を配布する必要があった。インバウンドによる需要拡大に向けては、国際基準に合った端末を増やすことも重要だ。

そこで2016年2月には、国内の銀行で初めて加盟店への端末提供を開始。端末は海外製の低価格なものを導入した。さらに、同年4月からは北陸地方で初のVisaデビットカードの取り扱いを始めた。Visaのライセンスを取得したことで、それらが可能になった。地域金融機関としては、異例の取り組みだった。

デビットカードの発行条件は、クレジットカードより幅広い人々が利用できるよう、15歳以上なら何歳でも申し込み可能とした。申し込み時の審査は原則的に不要で、支払い時にカードを提示すれば預金口座から即時に引き落としが完了する。

また、カード利用を電子メールで通知するサービスも導入した。さらに、スマートフォン・アプリの「北國おサイフアプリ」も開発、提供し、カード利用で得たポイントの残高や利用明細、加盟店の検索などができるようにした。地域活性化につながるよう、貯まったポイントは地域の加盟店で利用できるという仕組みも作った。

「キャッシュレス化では、カードを所有する個人を増やすと共に、端末が設置されている加盟店を増やすことも重要です。また、カードを発行しても、利用してもらえなければ意味がありません。そこで個人には無理に勧誘したりせず、スマートなライフスタイルを提案し、利便性やお得さを実感してもらおうとしています」

北國銀行のカードは現在、キャッシュレス化が難しいと考えられていた過疎地や高齢者の間でも多く利用されている。カードには「非接触機能」が付いており、タッチするだけで決算が終わることから高齢者も簡単に使える。「小銭を出したくない人は多いので、使い方がシンプルなほど利用者は増えるはずです」

「北國おサイフアプリ」でカード利用で得たポイントの残高や利用明細、加盟店の検索などが可能

北國銀行で発行するVisaデビットカード。加盟店への端末提供も実施 写真提供:北國銀行

地域のニーズに応え
新たなビジネスモデル構築へ

地方銀行の間では一般に、「カード事業は儲からない」、「加盟店契約業務(アクワイアリング)には手を出さない方が良い」という雰囲気が根強いという。しかし、北國銀行の取り組みは、これらが事実ではないことを示す。

「地方銀行は地元に多くの取引先を持っているので、アクワイアリングに適しています。さらに地域の生産性向上に向けては、キャッシュレス化だけでなく、販売時点情報管理(POS)やクラウド会計とつなげていくことも有効でしょう」

北國銀行では今後、人工知能(AI)も活用し、小売りやサービス業に簡単に融資できるビジネスモデルの構築も目指している。さらに、預金と融資以外の幅広い業務も展開し、地域とのコミュニケーションを深めていこうとしている。

「大切なのはお客様のニーズで、お客様の声を大事にしながら私たちも考えていきます。新しいモデルを取り入れて行かなければ、地方銀行は将来、生き残れず、地方銀行がなくなれば地域の方々も困ります」

地方には都会と比べて競争相手が少ないというメリットがあり、地域に根差したビジネスは、どちらかというと「ブルーオーシャン」だ。北國銀行では北陸地域を中心とした幅広い業務を展開する中で、ECサイトの立ち上げも検討しているという。大手ECサイトは出店に必要な手数料が高く、地域の小売店にはハードルが高い。地方銀行の信用力に裏打ちされたECサイトに、地域の店舗が出店できるようになれば、他のサイトとの差別化もできる。POSの活用による効率化も進め、生産性を向上させ、北陸地域の活性化を目指す。

 

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