キッコーマンの広報戦略 広報は情報を扱う「商人」

臼井 一起(キッコーマン 執行役員 コーポレートコミュニケーション部長)

最大のメディアは商品

上野:キッコーマンは今年、会社設立100周年と伺いました。しょうゆづくりを始めてからは350年以上の歴史を持つ老舗です。臼井さんは20年以上の広報歴をお持ちですね。広報の仕事について、部内でどんな話をしていますか。

臼井:コーポレートコミュニケーション部のメンバーには、我々は「情報という商品を扱う「商人(あきんど)」である、という話をよくします。私たちの意図が相手に理解され、活用されて初めて意味のある「情報」になります。基本方針は「3つのS」。「Share(共有する)」「Speed(スピード感)」「Sincerity(誠実さ)」です。

上野:2020年までに「キッコーマンしょうゆ」をグローバルスタンダードの調味料にしようという決意表明をしていますね。

臼井:連結ベースで売上高の6割弱、利益では7割以上を海外が占めますので、少しずつグローバルスタンダードに近づいているのは確かです。一方まったく知られていない国や地域もあり、まだまだといったところです。

上野:ステークホルダーとの間で情報や価値観を共有したり、理念を浸透させたりするために、特に力を入れていることはありますか。

臼井:我々のメッセージを伝える最大のメディアは商品です。例えばしょうゆは、もっとも高品質でおいしいのは本醸造だという考えのもとで展開していますし、和風総菜の素の「うちのごはん」シリーズは、化学調味料は一切使用せずに、野菜のだしをベースに商品化しています。こうした特性はパッケージに記載しています。そこに我々のメッセージを込めています。

ブランドは、長く続くものでなければならないというのが私の持論です。数百年続くキッコーマンというブランドが、これからも続いていくようにしなければなりません。

「熱量」を持って伝えよ

上野:社内外に情報を発信するにあたって、心がけていることはありますか。

臼井:広報として正しい判断をするために、一次情報以外は必ず裏を取るようにしています。情報は人を介在すると、そこに誰かの意図が入り込むものです。部員には性善説で仕事をしないようにと言っています。

上野:若い方々に伝えたいこと、また伝えていることはありますか。

臼井:「熱量」という言葉を強調したいですね。人に何かを伝えたいときや、何かをやろうというときに、その人が持っている熱量がとても大事だと思うんです。表現方法は千差万別ですが、「情熱」とは少しニュアンスが違います。体の内にあるもので、本当にこのメッセージを伝えなければいけないと思ったらおのずと出てくる。熱量とはそういうものだと考えています。

上野:なるほどマクルーハンの「ホット&クールのメディア論」に通じるところがありますね。その「熱量」は大切にしたいものですね。

《聞き手》
社会情報大学院大学 学長 上野征洋氏

 

臼井 一起(うすい・かずき)
キッコーマン 執行役員 コーポレートコミュニケーション部長

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