座談会 おカネと人脈、やりがい...、20代起業のリアル

20代で起業した経営者たちは、何を思い、どのような経験を積んできたのか。直面する課題や投資家との関係づくり、人脈の開拓など、成長企業となるまでの苦労、起業家としての「本音」を語ってもらった。

(左から)森雄一郎・ライフスタイルデザイン CEO、宮田昇始・SmartHR 代表取締役CEO、中嶋汰朗・SCOUTER CEO

――皆さん、20代で起業されていますが、どのようなピボット(方針転換)や転機を経て、現在のサービスに至ったのですか。

宮田:僕は2013年、28歳で起業して、現在は企業が行う社会保険・雇用保険の手続きを自動化するクラウド人事労務ソフト『SmartHR』を提供しています。

世に出したサービスとしては3つ目で、最初の2つは机上の空論で考えていました。見込みユーザーにヒアリングしても「強いて言えば......」と、あまり困った様子がなかった。ところが、『SmartHR』は「それ、本当に困ってるんです!」という反応ばかりで、人事労務の課題はこちらが聞いていないことまで、どんどん話してくれる。そのとき初めて、これが世の中の課題を見つけることかと強く感じました。

それに、ボツになったサービスは、みんなの反応を確かめても、返ってくる声がバラバラ。それに対して、『SmartHR』はみんな同じように反応し、しかも熱量が違う。プロトタイプのときから、手応えはありました。

森:僕は25歳のときに起業し、クラウド上に登録した採寸サイズデータをもとに、インターネットと実店舗でカスタムオーダーのシャツ・スーツを販売する『LaFabric(ラファブリック)』を手掛けています。

起業してから、『LaFabric』にたどり着くまでに2年かかりました。起業する人はみんなそうだと思いますが、最初は「自分ならできるはず」と、根拠のない自信があったんです(笑)。でも、現実は違いました。

当初は輸入ビジネスなどをしていたのですが、実力不足を痛感し、一度会社を休眠させて、メルカリで1年間、修行させてもらいました。

『LaFabric』は、既製服のサイズが合わなかった自分が欲しかったサービスです。自分が顧客になった発想から生まれました。幸運だったのは、自分がバスケ部出身で、周囲にも既製服のサイズに不満を持っている人が多かったこと。友人に事業のアイデアを話したら、「俺も困ってる」と言ってくれて、このサービスを喜んでくれる人が確実にいると実感できました。

中嶋:僕は21歳、大学3年で周りが就活を始める時期に起業しました。現在は、誰でも転職エージェントになれるサービス『SCOUTER(スカウター)』を運営しています。『SCOUTER』は、転職したい友人・知人を企業に紹介するサービスで、紹介者は年収の5%を報酬として受け取れます。友人・知人ならば、その人材のことを熟知しているので、質の高いマッチングができるんです。

学生時代に起業しましたが、大手企業に就職したとしても、20代の頃はそれほど給料が高いわけではないし、起業の経験を活かせば、新卒で就職するよりも良い会社に入れる可能性がある。全くリスクは感じませんでした。

創業メンバーは、大学の同級生が大半。声をかけたのは、優秀で内定を取りまくれるような人ではなく、留年していたり、少しはぐれたところにいた人。単純に、そうした人のほうが声をかけやすかった(笑)。逃げ道がないので一緒に頑張ってくれるんです。

初代CTOも同級生ですが、まだ本格的な開発経験がなかった頃、MacBookを持っていたという理由でシステム開発を任せました。でも、結果的には、彼が一人で『SCOUTER』のシステムを開発したんです。

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