2017年5月号

地域ブランドを世界へ届ける構想

瀬戸内・小豆島 「弱み」を「強み」へ変換するプロデュース

磯田周佑(MeiPAM代表)

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多文化受容という島の精神性から、突出したものがないことが小豆島の弱みであると磯田周佑氏は考えていた。しかし、他の地域でのプロデュースを経験する中で、地域内の連携の重要性や、"よそ者"の視点で地域を捉えることの大切さに気付き、それらを踏まえた新しい観光ブランドを打ち出した。

磯田周佑 MeiPAM代表

磯田氏は、大学卒業後に就職したKDDIを退職後、小豆島へ移住。現在は、オリーブオイルなどの通信販売を手がける小豆島ヘルシーランドに所属し、地域事業を運営するグループ会社の代表として観光事業「MeiPAM」の運営を行う自称「移住サラリーマン」だ。

小豆島は、瀬戸内海で岡山と香川のちょうど中ほどに位置し、古くより海上交通の要所として栄えた島。「この島で暮らし始めて4年になるが、これ!という強い特徴がなくやや押し出しの弱い印象があります」と、住民としての実感を率直に語る磯田氏。近年は台湾~高松・岡山を結ぶ直行便ができたこと、2010年からトリエンナーレ方式で開催されている「瀬戸内国際芸術祭」が一定の成功を収めたことでインバウンドニーズは高まりつつあるが、追い風をものに出来ていない現状に歯がゆさを感じているようだ。

「本社が通販事業を営んでいることから、人口約2.9万人の島という閉鎖空間で物量に物を言わせる地域ブランディングを競っても勝てないのはわかっています。さりとて観光事業に目を向けても、大型ホテルに宿泊するバスツアー全盛期の名残が残っているせいか、受け入れ体制が旧来型のまま。島の夜や朝を楽しむ観光資源が何もないので、もったいないなぁと思っていました」。そこで、小豆島の歴史や産品を活用した新しい観光ブランドを提案するヒントをみつけられればと、ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業へ参加。講義・ワークショップの他に、北海道美唄市にて地域の魅力を考え、インバウンド×スポーツツーリズムを企画する実践的な研修を積んだ。

研修を受けながら、改めて小豆島を"よそ者"の視点で見直してみると、「神道・仏教・キリスト教といった多様な信仰を受容した精神性や、他地域の文化を受け入れながら数々の産品を発展させてきた小豆島の魅力が見えてきました。これといって突出したものがないと言えば弱みになる、けれど、その多様性こそが強みなのだと再認識したのです。弱みを強みへ変換するプロデュースをすればいいのだ、と」。多様性を受け入れる小豆島の精神性は、ストレスにさらされている現代人のニーズにも合うはずとの考えは社内の多くの人にも共感され、オリーブ、醤油、そうめんといった小豆島の地域産品に、島の歴史に宿る精神性を掛け合わせた「瀬戸内・小豆島リトリートキャンプ」という新しい観光ブランドを打ち出した。「リトリート」とは、仕事や家庭生活等の日常生活から離れ、自分を見つめなおす場所を指す言葉で、日本の禅がベースとなった考え方である。具体的には、台湾の20~40代女性をメインターゲットに、ヨーロッパの男女をセカンドターゲットに据え、「宵禅」や「朝ヨガ」など、小豆島の「精神性」「自然」「食材」にフォーカスした夜と朝のアクティビティを観光ツアーのプログラムとして導入するというもの。日本に存在する最古クラスのオリーヴの樹として知られる樹齢千年のオリーヴ大樹をシンボルに、小豆島を精神的な安らぎを提供する新しい聖地としてアピールする観光モデルをつくろうという試みだ。

スペインのアンダルシアから海を渡って根付いた"よそ者"の樹齢千年のオリーヴ大樹と、その周りで座禅をしている様子

"よそ者"の評価を力に

磯田氏は現在、研修を活かして関係性を築くことに成功した台湾の専門旅行代理店・L-instyle BoutiqueTravel Services(風尚旅行)と連携してサークルツアー誘致をしつつ、地域限定の旅行代理業取得の準備を進めていこうとしている。同社は、日本の自然や文化、アートなどを紹介し現地での体験型ツアーとして提案することを得意とする代理店で、昨年は台湾きっての日本旅行通のブロガーCarolLinを擁し、小豆島、直島、豊島を巡る「瀬戸内アート周遊ツアー」を3回実施し、いずれも好評を得た。こうした域外連携を、域内連携より先行させた理由について磯田氏は、「地域の人が気づいていない魅力を、"よそ者"はよく知っているからです。まず、"よそ者"に小豆島の魅力を評価してもらい、実績をつくることで、地域内のステークホルダーの関心を集められると考えました」と説明する。

「来年には自主ツアーを開催し、地域産品の通販事業にも貢献したい」と事業プロセスを語る磯田氏。着地を観光業にするのではなく、通販事業につなげていくのは、小豆島を離れてからも島での非日常体験を思い出してもらい、地域のファンを増やしていこうと狙っているからだ。昨年実施したモニターツアーでは、樹齢千年のオリーヴ大樹などのパワースポットでの「宵禅」や「朝ヨガ」、マインドフルネスや呼吸法など心を整えるためのレクチャー、オリーヴ収穫や素麺づくりなどの体験ツアー、瀬戸内の新鮮な海の幸や野菜を使った「心と体が健康になる食事」などの提供を受けた観光客は、一般的な観光客に比べて土産購入の単価がアップしたという効果が実証されており、「瀬戸内・小豆島リトリートキャンプ」が、島の観光PRや地域産品の認知度アップにも寄与するとの自信を深めている。物販には在庫リスクがつきものだが、直営の土産物店で海外個人旅行(FIT)向けの販売をすることで、リスクヘッジを図りながら、2019年に開催が予定されている第4回瀬戸内国際芸術祭による市場活性化も期待できるとあって、関係者らの士気はますます高まりそうだ。

 

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