2017年5月号

構想を実現する戦略広報

会社が苦しい時こそオープンであるべき

荻田 伍(アサヒグループホールディングス 相談役)

0
​ ​ ​

アサヒグループホールディングス 相談役 荻田 伍氏

危機意識を社員と共有

荻田:アサヒビール営業マン時代の最も思い出深い出来事は、1987年の「アサヒスーパードライ」の発売です。本当に魅力のある商品は店頭を動かす力がある。そのパワーのすごさを初めて経験しました。そして、2001年には夢にまで見た業界トップシェアを取ることができました。

上野:アサヒビールの専務執行役員からアサヒ飲料に移られたのは、その翌年の2002年でしたね。

荻田:正直なところ、「これで自分のサラリーマン人生は終わったな」と思ったものです。当時のアサヒ飲料は3期連続赤字で、債務超過に陥るのは時間の問題と言われていました。先輩方が業績を改善できなかったのに、私ができるとは到底思えませんでした。ただ、会社をつぶしてはいけないという思いだけは持っていました。そこで考えたのは、アサヒ飲料の現状を、いいことも、悪いことも、すべて赤裸々に社員に伝えようということです。商品のコストや利益構造など、あらゆることを経営陣の責任で進めることもその時に決めました。ここでもまさに広報が重要で、あるがままの情報を伝えるようにしました。アサヒ飲料時代は、経営者としてしなければいけないことは何かを学びました。

《聞き手》社会情報大学院大学 学長 上野征洋氏

経営理念は立ち戻る原点

上野:2006年に社長としてアサヒビールに戻られました。トップとして、マーケティングコミュニケーションと、インターナルコミュニケーションの両方で、非常に気を遣われたのではないでしょうか。戦略的には内と外のバランスを保つことが重要なので。

荻田:私は広報活動というのは、「社内向き」が大切だと考えてきました。もちろん、経営トップとしての考えをマスコミの取材を通じて社外に発信したりしますが、それは社会を通じて社内に発信しているともいえる。そんな思いを強く持っていました。

上野:アサヒビールは、経営理念に忠実な会社としても知られています。理念を末端にまで浸透させるには、ご苦労もあったのでは。

荻田:経営理念というのはあるべき姿であり、すべてのお客さまに対するアサヒグループの約束です。「言霊」という言葉がありますが、みんなで唱える言葉に魂がこもっていなければいけない。そのために、理念の本当の意味を、広報を通じて色んな機会にかみ砕いて伝えてきました。もっとも、心配なのはむしろ業績が良い時です。

上野:「甘え」のようなものが出てくるということですか。

荻田:調子が良いと、人はつい傲慢になりがちです。うまくいかない時も、うまくいっている時も、常に経営理念に立ち戻り、自分たちの存在価値を確認しながら、企業としてあるべき姿を追求し続けなければいけません。

上野:経営理念は"立ち戻る原点"として機能しているのですね。

荻田 伍(おぎた・ひとし)
アサヒグループホールディングス 相談役

 

0
​ ​ ​

バックナンバー

最新情報をチェック。

社風が変わる、イノベーターが育つ

地方創生・イノベーションにつながるアイデアと思考に注目!

志高い、ビジネスパーソン・行政・NPO職員・起業家が理想の事業を構想し、それを実現していくのに役立つ情報を提供する、実践的メディア。

メルマガで記事を受け取る

メルマガ会員限定で、
ピックアップしたオンライン記事を
毎日お届けします。

メルマガの設定・解除はいつでも簡単

バックナンバー検索

注目のバックナンバーはこちら


会員になると 最新「事業構想」が読み放題。さらに

会員の特典をもっとみる