2017年4月号

地域発のインクルーシブデザイン

固定概念転換が新事業開発のカギ

インクルーシブデザイン・ソリューションズ

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極端ユーザーから見すごしているニーズを探る、イギリス発祥のインクルーシブデザイン(ID)が、日本でも注目されている。事業構想研究所の小塩篤史研究科長が、日本におけるIDの先駆者、インクルーシブデザイン・ソリューションズの井坂智博社長にインタビュー。超高齢化社会に新規事業を生み出す、IDの可能性について聞いた。
聞き手 小塩篤史 事業構想大学院大学 事業構想研究科 科長

 

固定概念を取り払い未来の社会を見通す

――インクルーシブデザイン(ID)とは何か。まずは、簡単に説明をお願いします。

井坂:成熟経済においては、マス市場の平均的なユーザの調査を行ってもユニークな商品を生みだすのは困難です。インクルーシブデザインでは、障がい者や高齢者などの極端ユーザをリードユーザと呼んでいます。

リードユーザの観察から、平均的ユーザが自分でも気づいていない「潜在ニーズ」が明らかになり、巨大な未開拓市場を察知して、視点拡大や新規事業創発につながります。

目が見えない、耳が聞こえない、歩きにくい...。それは単に超高齢化の未来というだけでなく、社会が背負う負を表しています。リードユーザの絵姿は20年30年先の社会課題を包含するリアルな姿なのです。

図1 インクルーシブデザインで極端ユーザから見えないニーズを探る

 

――顕在化していない課題を捉え、その解決策を作っていくことが事業構想の王道。そう捉えると、IDは、障がい者のための問題解決ではなく、リードユーザ(障がい者含む)の視点を借りながら、今、我々が気付いていない課題をあぶりだしていく。未来に共通して潜む社会課題の本質を見出す良い手法だと言えます。

井坂:障がい者は社会的弱者、支えるべき人たちという固定概念を取り払うことが重要です。私自身、健常者よりも聴覚や臭覚、触覚に優れた障がい者を多く見てきました。障がい者が、健常者にはない強みを持っていると感じた時、その掛け算が新しい事業を創るうえでのヒントとなると考えました。障がい者の雇用をIDという考え方で拡大していけば必ず、企業や自治体のイノベーションにも活用できる。企業や自治体が障がい者を支えるのではなく、対等な立場でお互いの強みを活かすことで、持続的なイノベーションを生み出していくことができると感じたのです。

井坂智博 インクルーシブデザイン・ソリューションズ 代表取締役社長(右から2番目)

行間を読む力とバックキャスティング思考

――リードユーザの姿から未来の社会課題を抽出するには、仮設を立てて問題を定義する、アナロジー的な思考が必要です。

井坂:日本で言う行間を読む力。実はこれが、問題定義力なのです。ただ、日本では、行間を読む、あるいは季節感を感じ取るといった感性をビジネスの中で活かしていない。これを日本人がビジネスの中で使えるようになれば、問題定義力で日本人にかなう国はないと思います。

また、ビジネスにおいて現場をどこと捉えるかも重要です。例えば、BtoBの製品を作っている企業の多くは、お客様(現場)を納品先企業と捉えています。しかし我々はあえて、リードユーザの生活を観察することを勧めます。最終的には人間の生活にどう貢献できるかが企業として求められるスタンス。最終顧客を知った上でバックキャスティング(未来の社会課題から現在に身をおき、問題定義から解決に向けた施策を創造する方法)で戻ってきて目の前の企業、お客さまに価値を提供していく。これが、リーチとしては適切かと思います。

図2 バックキャスティングの全体像

カスタマイズされたソリューションを

――バックキャスティング。未来予測をする時に、人間の想像力だけでは難しい部分があります。そういう点で、実際に目の前にいる人(リードユーザ)を通じて未来の課題を考えられるのはアプローチとして優位性があります。バックキャスト思考でリアルな未来の社会課題が発見できる点が、IDの面白いところだと感じます。

井坂:それを、例えばAIやインバウンド観光といった、これからの新規事業につなげていけるとよいと考えています。

――新規事業では、高齢化社会の課題、地域の課題をいかに的確に捉えるかが重要です。シニアマーケティングの限界は「らくらくフォン」を見れば顕著です。何らかの不便を抱えている人たちの最大公約数的なところでモノを作ると、誰に対しても何の満足も生み出さないモノが出来上がる。高齢者の不満を単に補うのではなく、それぞれのニーズにカスタマイズされたソリューションを創り出すことが必要ですよね。

井坂:わざわざ日本に来て、高齢者や障がい者など300人のリードユーザーを徹底的に観察している外資系企業もあります。超高齢化社会に起こりうる負を観察し、そこから社会課題を1000個も2000個も見つけ、ビジネスに繋がるものだけをチョイスする。

世界に類を見ないスピードで超高齢化が進む日本において、いかにうまくIDを活用し新しい事業を生み出していくかが、企業にとっても地方自治体にとっても重要なポイントになっていくと感じます。

事業構想特別セミナー
地域の社会課題から新事業を構想する

地域に山積する社会課題。今後、各企業には、社会課題の解決と自社の持続的な新事業開発の両軸を実現することが求められます。本セミナーでは、市区町村の首長をお招きし、地域医療、人口減少などの社会課題と、今後の地域におけるビジネスの可能性をお話頂くとともに、地域で新事業開発を行うためのワークショップを行います。

  1. 講師:
    小塩篤史(事業構想大学院大学 事業構想研究科 科長)
    井坂智博(インクルーシブデザイン・ソリューションズ 代表取締役社長)
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  3. 開催予定日とゲスト講師:
    第1回 2017年5月15日(月)13時30分~17時20分
    ゲスト講師:蝦名大也(釧路市長)
    第2回 2017年6月5日(火)午前
    ゲスト講師:豊岡市
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  5. 参加方法:
  6. 第1回参加は下記URLよりご応募ください。
    https://www.mpd.ac.jp/event/localdesignsem2017/
    ※募集人数は40名です。(申込多数の場合には抽選とさせていただきます)
    ※参加費は無料。セミナーごとにお申し込みが必要です。
    ※セミナー終了後には個別相談会を実施いたします。
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