町のパン屋を変えた「冷凍パン」ビジネス 全国1000店に顧客拡大

日本では馴染みのなかった「冷凍パン」の可能性に着目し、高級レストラン約1000店に販路を拡大したスタイルブレッド。ほんの10年前までは、小さな町のパン屋にすぎなかった。

スタイルブレッドの工場風景。パン作りの技術を標準化して分業体制を確立し、1日8万個のパンを生産する

「冷凍パンはおいしくない」----。そんな先入観を覆し、全国の一流ホテルやレストランへ“焼き立て”の冷凍パンを提供しているスタイルブレッド(群馬県桐生市)。今でこそ従業員数約230名を抱え、冷凍パン専業として売り上げを伸ばしているが、ほんの十年前はどこの町にもある、惣菜パンや菓子パンを販売するごく一般的なパン屋さんだった。当時の社名は「田中製パン所」。大正時代創業の同社が、今の業務形態へ移行したのは、4代目となる田中知氏が代表取締役に就任してからのことだ。

「父が社長をしている元で、22歳の時に社員として入社しました。当時は社員とアルバイトを入れて15名程度の会社でした」

田中 知 スタイルブレッド 代表取締役

アメリカでの冷凍パンとの出会い

ごく普通のパン屋が、冷凍パンという日本では馴染みのないビジネスを生み出せたのはなぜだろうか。田中氏は、2000年頃のアメリカでの経験が原点だったと話す。

「もともと21歳のときにアメリカのベーカリーで1年半ほど修行をしたのですが、30歳で再びアメリカへ10日間ほど研修に行き、その時に冷凍パンに出会ったんです。焼き立ての本格的なフランスパンを冷凍し、ホテルやレストランへ出荷していました」

冷凍パンには、焼く前の生地を冷凍したものと、生地を焼いた後に急速冷凍して使用時にオーブンで温める「焼成冷凍パン」がある。それまでは田中氏自身、焼成冷凍パンに対して「二流、三流のパン」と偏見を持っていたという。しかし、実際に味見をさせてもらい、その美味しさに驚くこととなった。

「自分が作っているものより美味しいと思いましたよ。どうしてこんな味を出せるのか、と工場の経営者やマネージャーにその秘密を尋ねました」

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