地方創生を実現する8人のキーパーソン 共通する要素とは?

本連載では、これまで多くの地方創生の実践者を取り上げてきた。当たり前のことなのだが、地方創生の担い手はごく“ふつう”の人々である。ではなぜ彼ら、彼女らは成果をあげているのか。その要素を分析したい。

地方創生に求められるのは、“a”ではなく“the”の視点、地域の唯一無二の存在を活かす方策である

計画から実行へ。「地方創生」は今年、セカンド・ステージへと進むという。

パッとつくって、パッと実行―。政府の関心はすでに「地方創生」から「一億総活躍社会」に移ったのだろうか。地域の活性化はそんなに簡単なものではないはずだ。地域の現場を直視し、そこからなにを汲み取り、どのように活かせばよいのか。実行段階であるはずの今こそ、ぶれずに進むための指針が必要なのかもしれない。

さて、この連載「地方創生の発・着・想」は、それぞれの現場で「地方創生」に取り組んでいる方々との創造的な対話(creative dialog)を通して、課題の本質を浮き彫りにし、解決策をともに考え、共創することであった。

これまでに8つのケースを取り上げ、毎回ささやかな論考を加えてきたが、読者の皆さまはどのように受け止められただろうか。このあたりで一度、私なりに総括しておきたいと思う。

地方創生に取り組む8人

バックナンバーを見返す必要がないように、以下に取り上げた人々と挑戦をまとめておいた。途中には、石破茂地方創生担当大臣、平将明内閣府副大臣を招いた地方創生特別セミナーをまとめた特別篇もあった(2015年10月号)。

第1回は、若者を出身地域に戻そうとする児玉さん。その鍵は受け入れ側にあるとの主張が印象的だった。第2回はネットとリアルを融合させた、あらたなものづくりで地域の活性化をめざす林さん。その視点はつねにグローバルだ。第3回は福嶋さん。「風土」の価値をいかに引き出すか。そのすべを追求し続ける求道者である。第4回に登場した河野さんは、復興の旗手としてメディアでも有名な親子であるが、地方創生の原点について深く考えさせてくれた。

そして第5回でとりあげたのは福岡という大都市の近郊で、たんたんと地域づくりに取り組む山口さん。自身や若いスタッフらの生きざまが、地域に「しみだして」あるいは「にじんでいく」のをみたようなおもいがした。第6回は気仙沼の木戸浦さん。斜陽といわれる造船業界にあって、まっすぐと未来を見据える性根の座った人だった。第7回は一転してサービス業、全国特産品の販売をてがける鈴木さん。マーケティング、すなわち消費者目線が最重要視される現代に、あえてつくり手のおもいに寄り添おうとする人だ。そのモノをみる目は確かである。そして第8回が大楽さん。ばらばらな事業をてがけてきたのが実は、地域の自立のためのトライアルだったという話をきいて驚嘆した。

地域に縁づいた「ふつうの人」が未来を創っていく

こうして振り返ると、地方創生の事例を取り上げるつもりが、自然と「ひと」に着目していたことにあらためて気がつく。人材、あるいは人財とも書く。そう、「ひと」こそが地方創生の“要”なのである。

実際、地域へ調査に出かけてよく感じるのは、当たり前のことなのだが、地方創生の担い手はごく“ふつう”の人々であるということである。連載に登場した人たちは実に個性的なようだが、話してみると、こういっては失礼だが、やはり“ふつう”の人だった。

ただ共通しているのは、広義・狭義の違いはあってもみな「生活者」、つまり地域で“縁づいた”人々であることだ。飛騨に縁もゆかりもなかった、アラブ生まれ東京暮らしの林さんでさえ古民家を買っている。生まれ、育ち、あるいは後づけであろうとなかろうと、とにもかくにも、その地と“縁ある”者のおもいが、そう、そうした人の想いだけが地域を変えることができるのだと思う。

もうひとつ忘れてはならない大切なことがある。登場した人たちは決してひとりではないということだ。彼や彼女を支える人たち、志を同じくする仲間が必ずいる。我々の目に映るのはあくまで氷山の一角にすぎない。その彼らには覚悟がある、なんとか地域のために頑張ろうという覚悟が。地域はその「覚悟」や「志」によって動くのである。地域に響く、あるいは共鳴するとでもいうのであろうか。おもいがつながり、うねりとなって地域が変わるのである。

“a”ではなく“the”が必要

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