2015年11月号

イノベーション戦略

IoTとマーケティングの未来 売るという行為からの脱却

岸波 宗洋(事業構想大学院大学 教授、事業構想研究所 所長)

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IoT(Internet of Things)は、あらゆる事物がオンライン化されることを意味する。現代に生きる我々は、携帯電話やPCによって、様々な情報をインプット・アウトプットしているが、その接続性は制約的・限局的といえる。本来的な情報便益は、情動コンピューティングを踏まえ必要な時に必要な情報を直感的にインプット・アウトプットできることが望ましく、一方で現在のデバイスでは、我々の生活価値に高度な優位性を持たない(通信帯域、インターフェイス等諸問題による)。

インターネットとの親和性が早急に求められるモビリティやホームエレクトロニクス等、優位性・期待可能性が高い分野は数多ある。それらが、すべてIoT化されていく新しい産業構造がインダストリー4.0といわれる第4次産業革命への布石となるのだ。

そもそも、IoTの目的は何か?

我々が、20世紀に培った産業構造では、21世紀を乗り切ることはできない。デフレ不況がバブル崩壊後から継続され「失われた30年」の時代が目の前に待ち受けている。広告の世界も既にパラダイムシフトを余儀なくされているのだ。「TVCMの崩壊」等という著書が世間を賑わせた時代から、それは形式知化され、現在はマスマーケティング依存から顧客主導型マーケティングがほぼ常識となっている。既に、ALT、BTL等という境界線もナンセンス、顧客による顧客のためのマーケティングオートメーション全盛期を迎えつつあるのだ。その中でIoTは、単なる市場・顧客情報を得るためだけの考え方ではなく、アウトプット(価値創造)を前提とし、さらにクロスオーバーなマーケティング志向(様々な領域の製品サービス価値を相乗的に展開していく)を前提とした、P.Kotlerいわく「マーケティング4.0(顧客自身の自己実現)」の中核的思考となるものだ。生活とマーケティングが融合された、「広告ではないマーケティング世界」がIoTの未来と共に広がっているのである。

東日本大震災以降、電力システム改革によって、様々なエネルギービジネスが巻き起こっている。HEMS(Home Electronics Management Service)のように、各家庭の電力計がスマートメーター化され、検針員が不要になっただけでなく、トラッキングデータによって家庭内電力消費状況の把握と、デマンドレスポンスと呼ばれる電化製品の自動制御、「見守りサービス」のように、消費者の負担なく安全欲求を担保するサービスは、当然のようにローンチされている。

また、Googleが、28の自動車ブランドと共にOAA(Open Automotive Alliance)を組織化した。車載端末との連携を促す「アンドロイドオート」によって、自動車の情報端末化と共にエンターテイメント化、マーケティング化を促進する。

消費者中心のマーケティング(コトラーいわく「2.0」)は既に時代遅れである。そして、IoTによって、新たなマーケティングの扉(コトラーのいう「3.0(価値主導)」、「4.0(自己実現)」)を開き、より実践昇華する時代である。いつまでも、分野に基づく市場、競合等といったテリトリー意識を掲げていては、次代のマーケティングを創造することはできない。今求められるマーケティングマインドとは、ROE(自己資本利益率)を最大化する力だ。言い換えれば、企業の社会的価値を追及し、必要があれば柔軟に企業間連携や新たな企業を生み出し、顧客の生活便益を最大化するGoogleのような社会資源性である。

まさにIoTと共にあるマーケティングとは「売るという行為からの脱却=顧客の本質的価値を創造し、自己実現を後押しすること」なのだ。

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