塩こうじブームの仕掛け人 伝統の再発見が生んだ逆転劇

日本古来の食材である「こうじ」の需要は減り続ける一方だったが、糀を塩の代わりに使える調味料としてアレンジした「塩糀」で、一躍注目の食材に。ブームの立役者、浅利妙峰氏は活躍の場を世界に広げている。

浅利 妙峰 糀屋本店 代表取締役

かつて日本の家庭では、こうじをもとに自家製の味噌や醤油、甘酒などをつくっていた。しかし、時代とともに食生活も変化し、味噌や醤油、甘酒は「つくるもの」から、「買うもの」になっていった。

「昔は人が生活する場所には必ずこうじ専業の店がありましたが、だんだんと減っていきましたね」と語るのは、こうじブームの火付け役、浅利妙峰氏。大分県佐伯市で江戸時代から325年続く老舗『糀屋本店』の代表取締役である。

こうじを表す漢字は2種類あり、「麹」は米・麦・大豆などの穀類を材料にしたこうじ全般を指す。もう1種類は『糀屋本店』もつくっている「糀」で、米を材料にした米糀のみを表す。同店も一時は廃業寸前まで追い込まれたが、塩糀の考案により復活を果たした。

『糀屋本店』の商品を求め、遠方から訪れる人も多い。店の向かいの建物では、糀を使った料理教室が開かれている

江戸時代の文献にヒント

こうじ文化が衰退の一途をたどるなか、なんとか店を守り続けてきた『糀屋本店』だったが、2005年、8代目の父が体調を崩した際、店の存続を迫られることになる。当時大学を休学して店を手伝ってくれた二男が、店を継ぎたいと手を挙げた。

「店を継いでくれることは嬉しかったけど、傾きかけたままの店を息子に渡すわけにはいきませんでした」

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