2014年4月号

防災を変える技術とアイデア

「非常時」に潜む創造のヒント

月刊事業構想 編集部

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「防災・減災」をテーマに開催されたハッカソンでは、数々の興味深いイノベーションのアイデアが披露された。多様な人材が交流する場は、多くの人にとって、創造の源となる。

ハッカソン「Race for Resilience」では、各チームが防災・減災のアイデアを競った

防災の未来がここにある。2月上旬、「発展途上国×防災・減災」をテーマに開催されたハッカソン「Race forResilience」では、数々のイノベーションの種が披露された。優勝したのは、電子母子手帳アプリを提供する「Savethe Baby」のチーム(詳細は、140~141ページ参照)。その他にも、数多くの興味深いプロダクトが生み出された。

ハッカソンは「ハック」と「マラソン」を合わせた造語で、さまざまな背景・スキルを持つ参加者が共同作業を行い、つくりあげたプロダクトの完成度を競う。今回は2日という短期間でチームを編成し、アイデアのプロトタイプをつくり上げた。

自然災害に見舞われることの多い日本から、世界に向けて何が提案できるか。東日本大震災から3年がたち、震災の記憶も風化しつつある。今回のハッカソンで提案されたプロダクトは、それぞれの個人的な体験、思いから生み出されたものが多い。3.11のときに、自分は何を感じていたのか。改めて問い直すことで、非常時の記憶にも、イノベーションの種は宿る。

「ハッカソン」の参加者は、プログラマーやエンジニアなど、IT業界の関係者が多い。しかし、その手法は、多くの人に開かれている。未来へのアクションに挑む機会は、大きく広がっている。

「防災・減災」のハッカソンで発表された主なプロダクト

Olympic for Resilience

発展途上国の人々は、そもそも防災の重要性を認識していないことが多い。「防災オリンピック」では、避難のあり方を学べる徒競争など、独自の競技をつうじて、誰でも楽しく防災の知識を身に付けることができる。

X-borders

外国人のために、リアルタイムで緊急情報を提供するソーシャルネットワークを提供。日本でも、災害情報は圧倒的に日本語で提供されている。近くにいる同じ母国語の人とつながりやすくなるシステム。

OpenEarthQuake

地震計ではなく、スマートフォンなどから詳細な地震のデータを収集し、それを見える化。取得したデータは、耐震設計の建築やまちづくりにも活用。

Save the Baby

日本発の「母子手帳」の仕組みをウェブ化し、途上国でも活用。若い母親や子供たちに必要な健康情報を提供する。また、医療の専門家が地域のヘルスケア情報を収集し、疫病のまん延を防ぐことにもつなげる。

Kamishibai/EHON

災害に関する絵本を各国の言語に翻訳し、ウェブで提供。識字率の向上と防災知識の習得につなげる。

Mobile Radio Station

独自のラジオ局を作成できる安価なキットを提供。ラジオによる情報提供で、人とのつながりを促し、普段からの情報共有を可能にする。

コミュニティFMに大きな可能性

テレビの向こう側で大災害が起こっている光景を目にしながら、現地との情報ギャップを痛感し、報道量が増えていく中でも、知りたい情報は手に入らない。災害時には、自分が欲しい情報とマスメディアが提供する情報の間に、ギャップが生まれてしまう。縁のある地域の被災状況、身の回りの交通情報、正しい避難経路など、個々人が置かれた場面によって、必要とされる情報は変わってくる。緊急時には、マスメディアではカバーしきれない、きめ細やかな情報提供が特に求められるのだ。

そうした中で価値を見直されたものの一つが、地域に根付いた情報を発信するコミュニティFMだ。地域の実情に合わせて、適切な情報を発信するメディアとして、その存在感は高まっている。

インターネットの浸透によって、自ら情報を発信するコストは急激に下がった。それは、ラジオという媒体でも同様だ。今では、コミュニティFMの放送をネット配信することも手軽にできる。

スマートエンジニアリングが提供するアプリ「FM++(エフエム・プラぷら)」は、地域で発生した災害・緊急情報を、コミュニティFM放送局や地方自治体からスマートフォンに配信するアプリだ。平常時は、コミュニティFM局のインターネットサイマル放送聴取用のアプリとして機能する。特徴的なのは、災害情報の提供に適した機能を豊富にそろえていることだ。

緊急時に、文字と異常音で情報をプッシュ配信することも簡単にできる。すでに、FMしまばら、FMかのや、いいだFMなど、全国のコミュニティFMで、「FM++」を使った放送の配信は始まっている。今後、自治体との連携も強化していく方針だ。

近年、見直されているローカルであることの価値。地域の課題は、その地域が主役になって解決する。そこから新しいビジネスも生まれてくる。地域に根付くことで、新たな可能性は広がっていく。

スマホが放射線センサーに

iPhoneにつながる放射線センサー「ポケットガイガー」

非営利プロジェクト「Radiation-watch.org」が開発した安価で高性能な放射線センサー「ポケットガイガー」を利用すれば、スマートフォンで線量情報をシェア・可視化することができる。

Radiation-watch.orgには、宮城県石巻市のメーカー、ヤグチ電子工業の有志メンバーを中心に、日本国内のハード・ソフトのエンジニアや大学研究者、海外の専門家が参加している。

開発資金は、クラウドファンディング「Kickstarter」で調達。震災後すぐに世界中から160名以上の投資者が集まり、2011年8月に販売を開始した。半年で1.2万台以上が出荷され、その売上げは被災地の雇用維持にも使われている。

ポケットガイガーがあれば、誰でも簡単に放射線量を測り、その情報をシェアすることができる。これまで利用者が共有した線量データは、100万地点以上。フェイスブックのユーザーコミュニティ(登録者数1800名以上)には、数千件を超えるトピックが立てられ、活発な議論がなされている。

また、仕様や技術情報がオープンになっているのも特徴だ。

Radiation-watch.orgが掲げるミッションは、時計を見たり、天気予報を聞いたり、温度を測るのと同じくらい、放射線の情報を身近なものにすること。放射線センサーを日常的に使えるツールにすることで、環境・汚染に対する人々の意識を高めることを狙っている。

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