2014年4月号

防災を変える技術とアイデア

「正確な予測」が実現する未来へ

岡田義光 防災科学技術研究所理事長

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あらゆる自然災害を対象に、防災の観点から、最先端の研究開発を進める防災科学技術研究所。気象庁や全国の大学にデータを提供するなど、日本の防災研究の中核を担う。

岡田義光 防災科学技術研究所理事長

東日本大震災以降も、ゲリラ豪雨や台風、竜巻、今冬の大雪など日本全国でさまざまな自然災害が頻発している。こういった地震、津波、水害、土砂災害、雪害などの自然災害全般に対して、防災の観点から最先端の研究開発を行っているのが防災科学技術研究所だ。

同研究所の設立は、1959年にさかのぼる。死者5000人を出した伊勢湾台風の惨事を受けて、科学的研究によって防災体制を整えるために、1963年、前身の国立防災科学技術センターが設立された。その後、01年に独立行政法人となり、現在に至る。

現在では、「観測予測研究領域」として地震・火山防災研究ユニット、水・土砂防水研究ユニット、雪氷防災研究センター、「減災実験研究領域」として兵庫耐震工学研究センター、「社会防災システム研究領域」として災害リスク研究ユニット、アウトリーチ・国際研究推進センターの3セクション・6グループに分かれて活動している。

全国1900ヵ所で地震観測 

なかでも大きな役割を担っているのが、「観測予測研究領域」の3グループだ。

特に地震・火山防災研究ユニットは、阪神大震災、東日本大震災を経て国民的に危機意識が高まり、さらに南海トラフ地震や首都圏地震が危惧される中で、その責任は重みを増している。

防災科学技術研究所理事長・岡田義光氏は、こう語る。

「1995年の阪神大震災を機に、当研究所が全国的に地震を観測するという役割を担うようになりました。気象庁は全国200ヵ所で観測していますが、当研究所では全国1900ヵ所で観測しており、このデータは気象庁と全国の大学にも提供しています。地震が起きたとき、震源決定に使われるデータの約6割が当研究所のデータによるものです。また、07年には気象庁と共同で緊急地震速報のソフトウェアも開発しています」

大型構造物の震動破壊実験を行う実験施設「E-ディフェンス」。運用当初は、構造物の破壊過程を解明するための振動実験が中心だったが、最近では新技術・新構法の検証や施設の機能保持についての研究も実施

地震が起きたときに情報を発信し、警報を出すのは気象庁だが、その縁の下の力持ち的存在が同研究所なのだ。

ちなみに、「減災実験研究領域」の兵庫耐震工学研究センターは、E-ディフェンスという世界最大の震動台を使ったビルや建築物の耐震検証を担当しており、耐震技術の確立・検証に活用されている。

また、最近では東日本大震災で甚大な被害を及ぼした津波の観測にも力を入れている。

「東日本大震災で明らかになったのは、津波への備えが万全ではなかったということでした。これまでは、津波の高さや到達時間は陸上のデータから見積もっていたので、正確な津波の高さを予測するのは難しかった。

今後の津波に備えて、北海道沖から房総沖にかけて、海底の約150ヵ所に地震計と津波計の設置を始めました。これによって、今までより10秒から15秒ほど早く緊急地震速報を発信でき、また、より正確な津波情報を15分ほど早く発信できるようになります。全部で6つの海域に分けて順次設置しており、2015年度中に完了予定です。既に最初の房総域は終了し、次の岩手・青森域に入っています」

高性能レーダーで雨量を予測

台風、大雨、土砂崩れに関する研究開発を担う水・土砂防水研究ユニットの活動も、注目を集めている。

従来の雨量予測は、気象庁のレーダーが広い範囲で空と雲の状態を計測し、地上に設置されたアメダスの雨量計で補正してデータ化してきた。同研究所は、それに代わる高性能レーダーを開発したのだ。

「従来のレーダーは、一つの電波で雨粒を計測していましたが、新型機は2つの電波で雨粒の形状を計測することで、より正確に雨量を測定できます。しかも、アメダスのデータは必要ありません。これは画期的なことです。新型機は既に実用化されており、国土交通省の旧河川局に技術供与して、現在では35個の新型レーダーが全国の80数%をカバーしています」

同研究所ではさらに現在、積乱雲に水蒸気が集まっている段階で計測し、集中豪雨の予測をする方法などを研究している。ゲリラ豪雨、竜巻、あられなどの原因は積乱雲で、水蒸気段階で計測できるようになれば、より早く警報を出せるようになるのだ。

また、雪氷防災研究センターは雪氷災害の研究をしている日本唯一の機関になる。新潟と山形に研究拠点があり、降雪・積雪の観測と予測に関する研究を行っている。気象庁の雪崩、吹雪の予報は広範囲を対象にしているため精度が不十分であり、より精度の高い予測と情報提供を実現するシステムを実証中だ。

この2月に関東を襲った大雪は、山梨やその周辺に大きな混乱をもたらした。今後、降雪の予測はより重要度を増すだろう。

「社会防災システム研究領域」は、これらあらゆる自然災害の観測、予測に関する研究成果や災害情報をいかにうまくまとめて市民に伝えるかを研究する部門になっている。

「自然災害に対して科学で立ち向かう」(岡田理事長)という使命を持つ防災科学技術研究所。同研究所の数々の取り組みは、どれも人命にかかわるものだ。日本の防災研究の中核を担う存在として、今後の研究成果にも期待が集まる。 

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