2014年4月号

防災を変える技術とアイデア

通信を「備蓄」する、防災の新アイデア

スカパーJSAT株式会社

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「情報」は食料や水と並ぶ大切な生活インフラのひとつだ。 東日本大震災ではこの確保に衛星通信が活躍した。 震災を教訓に、小型で使いやすい衛星システムの開発も進んでいる。

スカパーJSATが新開発したVSATと、開発者の同社技術運用本部・笹沼満通信技術部長(右)、内山浩通 信技術部部長代行兼第2システム技術チーム長(左)

災害に強い衛星通信 復旧復興に大きく貢献

東日本大震災では、固定回線や携帯電話の基地局の多くが被災(停電・断線)し、被災地全域で地上系の通信手段が遮断された。その危機に活躍したのが、地上3万6000キロメートルの衛星を使い、地震の影響を受けにくい衛星通信だった。

小型地球局(VSAT)は、地上系通信網が断絶した震災被災地で活躍した

震災直後、現地では(財)自治体衛星通信機構(LASCOM)の防災衛星通信ネットワークや小型地球局(VSAT)が有効な通信手段として活躍した。さらに通信事業者が、VSATや衛星車載局、衛星携帯電話などを被災地に数多く提供。通信の確保に大きな威力を発揮した。

「震災では、情報インフラの有無によって復旧復興のスピードに大きな差が生まれることがわかりました」。そう指摘するのは、スカパーJSAT・技術運用本部通信技術部長の笹沼満氏だ。衛星放送大手の同社はアジア最大の衛星通信事業者でもあり、震災直後から被災地に支援を行ってきた。

衛星通信の利用シーンは、災害発生からのフェーズごとに変わってくる。まず初めに救命・救援フェーズ。各地の被害情報を収集し、本部から指示を出すといった初動作業に衛星通信は役立てられた。スカパーJSATはその段階で、政府・公共機関や報道機関への衛星帯域の割り当てや、衛星携帯電話などの提供を行った。

新型VSATでは自動化や軽量化を進め、誰でも使いこなせる装置を目指した

次に復旧・復興フェーズだ。ここでは避難所と災害対策本部へのVSAT端末や衛星回線の提供、携帯電話事業者への帯域割り当てなどが行われた。また鉄道や電力会社の通信回線の再構築にも衛星が活躍し、ライフラインの早期復旧に貢献した。インフラが概ね復旧したあとも、スカパーJSATは仮設住宅のコミュニティースペース・仮設診療所・役場などに180局以上のVSATとインターネット回線を提供するなど、被災者の生活再建を支援した。

衛星通信の災害への強さは、全国の自治体やBCP(事業継続計画)に取り組む企業から大きな注目を集めた。特にさまざまな場所で通信を確保できる可搬型VSATへの期待は大きい。一方で「今回の震災では、災害時の利用に際しての課題も明らかになりました」と笹沼氏は話す。課題の多くは、VSATの使い勝手にある。VSATの設置ではアンテナの衛星方向への精密な調整が必要なうえ、管制局と電話でやりとりしながら送信レベルや周波数を確認するUAT(Uplink AccessTest)という作業も求められる。

部品の組み立ても複雑で、「熟練した技術者でなければ利用が難しい面がありました」という。余震や設置場所の変更でアンテナ方向が変われば、その都度再調整が必要になる。仮にVSATを保有していても、技術者がいなければ災害時に孤立するリスクはある。

通信開始までを全自動化 誰でも使える小型地球局

全国の自治体向けデモで高評価を得ている

このような課題を解決するために、スカパーJSATは総務省の委託を受け、全く新しいVSATの研究開発に取り組んできた。「コンセプトはいざという時に誰でも使いこなせる装置です。技術者の経験やノウハウを自動化し、装置自体も小型軽量化するという目標を立てました」と、同社通信技術部の内山浩氏は話す。

開発した装置の特長は、電源投入後、ワンタッチの操作だけで通信を始められること。自動でアンテナが展開し、衛星を捕捉。手間だったUAT作業も完全自動化しており、電源投入から通信開始までは約5分しかかからない。また装置は組み立てが不要で、重さは40キログラム以下と2人で持ち運べるように軽量化した。熟練技術者がいなくても、複雑なマニュアルを見なくても簡単に装置を立ち上げられる。

宇宙・衛星事業本部 官公事業部 築谷敦之アシスタントマネージャー

余震などでアンテナの方向が変わっても、自動で衛星を再捕捉して通信を再開する。利用開始から終了までは音声でガイドする。電気が通じていない場所でもハイブリッド自動車などの電源に接続すれば使用できるようにした。2013年度からは全国の自治体でのデモを実施し、概ね高い評価を頂いています。とくに防災関係機関など、実際にVSATの運用に当たる現場の方が『負担軽減につながる』と仰ってくれたのが嬉しいですね」とマーケティングを担当する官公事業部の築谷敦之氏は手応えを感じている。

「使い勝手の面などで、まだまだ見直すべき部分はあります。自治体などの意見を取り入れ、より完成度の高い装置の開発を目指していきます」と笹沼氏。早期の実用化・製品化を目指していくという。「AEDのように全国に配置されるような装置にしたいですね。将来は日本だけでなく世界中で使ってほしいと思っています」。食料や水と同じように、VSATが自治体や防災拠点に備蓄される日が訪れるかもしれない。

スカパーJSATのソリューションについて

スカパーJSAT株式会社
宇宙・衛星事業本部 官公事業部

電話:03-5571-7770

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