時計遺伝子の働きを制する

遺伝子研究の進展は、予防医療にもつながるいくつかの偉大な発見を生み出している。その代表例が、時計遺伝子や長寿遺伝子の発見だ。これら遺伝子の働きに基づいた生活術を身に付けることで、健康、かつビジネスにおける高いパフォーマンス維持が実現可能となる。

「病気になったらどうするかではなく、病気にならないためにはどうするか。老化を抑え、仕事のパフォーマンスを高めるために睡眠、食事、運動、入浴などのサイクルをどう設計していくか。近年、学問的研究が進んできたアンチエイジングとは究極の予防医学と言えるものです」―ハーバード大学医学部の根来秀行教授はそう話す。

アンチエイジングの研究は近年盛んに進み、遺伝子分野での成果は特に目覚ましい、と根来教授は話す。マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授のグループは、1999年に長寿遺伝子(サーチュインたんぱく質を生成する)を発見。根来教授も同グループと共同研究を進めている。また、ハーバード大学のジャック・ショスタク博士は、テロメア(寿命に大きく関わる。染色体の末端部にある構造)を発見し、ノーベル医学・生理学賞を受賞している。

「そして、生体リズムを生む体内時計をコントロールするのが、時計遺伝子です。ヒトのゲノム解析が急速に進み、この遺伝子の働きがわかってきました。これまでも、早寝早起きが健康に良い、朝食は食べるべき―といった健康法が、経験を元に指摘されていましたが、この時計遺伝子と長寿遺伝子の働きから、科学的な裏付けをもとに、健康に過ごし、健康に長寿を実現するための体のマネジメント方法が明らかになってきたのです」。

生理的な老化と病的な老化

体のマネジメントを考えるときに、根来教授は、まず、2つの老化に関する理解が必要という。一つは、「生理的な老化」。避けることのできない、年齢と比例した細胞数の減少などだ。

もう一方が、「病的な老化」だ。言葉そのものに、糖尿病なども指すが、病以外に、喫煙や飲酒、睡眠不足、過度な運動や紫外線による皮膚のダメ―ジなどで、身体に負荷がかかることで、細胞内のミトコンドリアから、細胞や遺伝子を傷つけるフリーラジカルの放出が増加してしまう状態を言う。

フリーラジカルの放出が増えると、身体が本来持つ力が低下し、肌であればシミやしわの増加、血管であれば動脈硬化、疾患であればがんのリスクを高めることになる。

この「病的な老化」の進行を予防するのが、マネジメントの目的となる。

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