大阪から日本のモデルをつくる

「大阪の再生」を目指し、大胆な「変革と挑戦」を推し進める松井知事。大阪市の橋下徹市長とタッグを組み、府市一体改革の先に「新たな大都市制度」の導入を見据える。大阪から日本の元気を取り戻そうと挑む。

─「成長と安全・安心の相乗効果による『良き循環』の実現をめざす」という政策スローガンを掲げています。そこにどのような思いを込めているのでしょうか。

大阪は、高度経済成長期までは東京に次ぐ第2の都市として発展を遂げていました。ところが、それ以降東京への一極集中が進み、大阪の一地方都市化が進みつつあります。日本がもう一度元気を取り戻すには、大阪が東京と並ぶもう一つのエンジンにならなければなりません。

そのためには、まず大阪の経済を再生させる必要があります。たとえば、大阪にはつくれないものはないというほど、技術力を持った中小企業が集積していますし、アジアの玄関口である関西国際空港、阪神港もあります。大阪が持つさまざまな資源を活かし、結びつけることによって、産業、雇用を生み出し、成長させることができます。

一方で、高度経済成長期に大阪で暮らし始めた人たちの高齢化が進み、医療・福祉を支える社会保障費が増加しています。加えて、防災、治安など、府民の安全・安心を支えるための歳出も必要です。この財源を、借金に頼るのではなく、成長に伴う歳入増で賄えるようにしていきたいと考えています。

この『良き循環』をうまく回していくことが目標です。

成長戦略の要は「特区」

─どのようにして、大阪の成長を実現しようとしているのでしょうか。

大阪府では、2010年に「大阪の成長戦略」を策定し、取組みを進めてきました。さらに、大阪府・大阪市が一体的に取組みを進めていくため、今年1月には府市の成長戦略を一本化しました。

戦略では、目標として、2020年までの10年間を目途に、「実質成長率で年平均2%以上」などを掲げ、これを実現するため進むべき方向として、大阪・関西の強みをさらに磨き、高い付加価値の産業等を創り出す「ハイエンド都市」と、アジアと日本各地を結び、集積・交流・分配機能を発揮する「中継都市」の2つを示しています。

成長戦略の要を担うのが、関西の3府県(大阪府・京都府・兵庫県)、3政令市(大阪市・京都市・神戸市)をはじめ、関西の産学官が結集して進めている「関西イノベーション国際戦略総合特区」(2011年12月指定)です。

大阪・関西が強みを持っているライフサイエンスや新エネルギー分野で、さらに国際競争力を高めるべく、集中的な取組みを進めています。

これまでに認定されたプロジェクト数は、全国最多の37。投資総額は、すでに約497億円に達しています。そして、ライフサイエンス分野では、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の西日本の拠点(PMDAWEST)が今年10月、大阪・梅田に設置されることが決まりました。これによって新薬開発のコスト、スピードが大幅に改善されることが期待されます。また、新エネルギー分野については、バッテリー戦略研究センターを設置し、世界標準の製品開発に向けた環境整備に取り組んでいます。

さらに、特区内に企業立地を促進するため、昨年12月には、地元市とも連携して、全国初の地方税ゼロ制度の創設となる大阪府特区税制を施行しました。新規立地企業は地方税(法人府民税、法人事業税等)を5年間ゼロ、それ以降の5年間についても2分の1とします。これにより、約38%の法人実効税率が最大で約26%にまで軽減されることになります。

医療、エネルギーなどの分野でイノベーションを起こし、新たな展開へと挑戦する企業が大阪でどんどん活躍できるようにするため、規制改革など、よりよい環境づくりを進めていきます。

日本の規制改革を先導

─中継都市を目指して、インフラ整備についてはどのような戦略をお持ちですか。

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