自治体に求められる戦略的広報のススメ

限られた資源(人と予算)を投入し、広報の成果を最大化するためには、より実効的、科学的かつ倫理的な自治体広報を展開する必要がある。本稿では、自治体運営にとって極めて重要になる、戦略的広報の考え方とマネジメントのあり方について述べる。

自治体広報はうまくいっているか

自治体広報の今をどう見るか? 精力的な自治体広報の結果、住民の行政への理解と地域への愛着が深まり、観光入込客数や移住者も増えている。地方創生に向けて、広報はうまくいっている。もしかしたら、そのような自治体もあるかもしれない。

しかし、本稿での認識は「自治体広報には課題が山積している」である。たとえば、金太郎飴的な広報が多く個性が発揮されていない、世界に理解されないガラパゴス的なプロモーションプランがつくられている、広報へのソーシャルメディア活用方法が誤っている、自治体PR動画の品性が問われているなどである。

自治体広報をめぐる
基本的な押さえ

自治体広報では、「誰から誰への広報か」を認識することが大切である。改めて、自治体(地方公共団体)とは、「一定の地域と住民からなり,その地域内において,自治権に基づき,公の行政をおこなうことを目的とする公共団体」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典)である。これを踏まえると、自治体には「法人組織としての自治体」と「地域としての自治体」の2つがあることになる(本稿では、それぞれ自治体<組織>、自治体<地域>と記す)。自治体広報では、まず「誰から」すなわち、自治体<組織>、自治体<地域>のいずれが主体かを明確にしなければならない。

「誰から」が決まれば、広報の訴求対象者「誰へ」が決まる。前者の訴求対象者は、主に地域内の構成員(住民、企業、団体、機関等)、後者は、主に地域外の利害関係者(来訪者、企業、マスメディア、投資機関等)となる。

次に必要となるのは、自治体広報の役割の認識である。その第一は、自治体<組織>と構成員の運命共同体的共生を維持することである。構成員の自治体に対する理解と信頼の醸成、両者の責任・義務関係の円滑化などがあてはまる。第二は、自治体<地域>の活力を維持・向上することである。地域外からの活力源(人口力、経済力、購買力等)の地域への誘引などが該当する。第三は、自治体<組織、地域>の運営に役に立つ情報や知恵を得ることである。地域構成員や地域外利害関係者から、自治体<組織>への要望や期待をひき出すことなどが該当する。

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