自治体広報の革新と展望

情報が社会の資源となり、情報によって動く社会が到来した。行政機関は、毎日、情報を収集・分析をする一方で、情報を発信し、市民との対話を繰り返えすなかで、首長と情報参謀たる広報部門の先見力が問われはじめる。

上野 征洋(社会情報大学院大学学長)

自治体広報の転換期

この10年、行政広報、とりわけ基礎自治体における広報のテーマや手法が大きく変化した。

マクロにはグローバル化による行政課題の変化、ミクロには住民意識の変化に伴なう事務事業の変容が挙げられる。

前者の課題で言えば、国際化に伴なう多文化共生やインバウンド観光への訴求など、後者では東北震災以降の防災意識の高まり、少子高齢化や福祉、年金などの課題に伴なう生活防衛意識の高まり、などなどの事例がみえる。「地域活性化」を十年一日のように唱える首長もいるが、その中味はどんどん変化しているのが実情だ。こうした行政課題や地域社会の変容に加えて、何よりもドライビング・フォース(駆動力)になっているのは、情報技術(ICT)の進歩に伴なう高度情報化、すなわちデジタル社会の進展である。

1990年代後半から爆発的に普及したインターネットや携帯電話によって、住民は情報の受容者から発信者へと変身した。さらに2010年以降、フェイスブック、ツイッターなどSNSの利用者が激増し、その進化形であるインスタグラムやLineなどのアプリの利用は小学生にまで浸透するに至った。

2016年末の統計では、全世界で約17億人がインターネットを利用し、国内での携帯電話登録数は人口をはるかに超える約1億4000万台。地域住民のほぼすべてがネットに繋がっており、いきおい自治体広報もホームページやSNSに力を入れなければならないのは自明の理である。

情報技術の進歩は自治体にも、行政情報の電子化やオンライン・コミュニティを越えてIoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence)の利活用を促し、さらに自動運転やロボットの業務導入など先端事業を地域の活力に取り込むための試行錯誤がつづく。

自治行政はICTの波に翻弄されているように見える。しかし転換期であることを見据えて、しっかりとキャッチアップを果たしている事例も少なくない。ここで情報社会の動きと自治体広報のあり方を簡単に整理しておこう。

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