象印マホービン、製品安全への先進的取組でPSアワード優良賞を受賞

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2025年8月21日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

消費者の誤使用・不注意を防ぐアイデアをかたちに -象印マホービン株式会社-(シリーズ:PSアワード受賞企業紹介 #5)

製品安全に関する優れた取組を表彰する「製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)」。

製品安全に関する取組実現までの背景やストーリー、事例に加え、製品安全への想いを綴ります。

象印マホービン株式会社について

象印マホービン株式会社は、1918年に創立した大阪の「市川兄弟商会」という町工場からはじまりました。

創業から100年が経ち、変わりゆくライフスタイルの中でも常にニーズに応え、「暮らしをつくる」という企業理念の下で、多くの人に親しまれ、愛される製品をつくり続けてきました。

炊飯ジャーを代表とする調理家電や、ガラスマホービン、ステンレスボトルといったリビング用品など、長年、多種多様な製品で人々の暮らしを支えてきた同社は、製品の品質管理への対応、厳しい試験の実施はもちろんのこと、ユーザーの誤使用・不注意による事故を防ぐための取組にも力を入れてきました。

この度、大手メーカーとしての製品安全への取組が評価され、2024年度PSアワード優良賞(審査委員会賞)を受賞しました。

概要

  • 創業:1918年
  • 所在地:大阪市北区天満一丁目20番5号
  • 事業内容:調理家電製品、生活家電製品、リビング製品などの製造・販売およびこれに附帯する事業
  • 代表者:代表取締役 社長執行役員 市川 典男
  • HP:https://www.zojirushi.co.jp/index.html
象印マホービン株式会社ロゴ画像

顧客の声を製品改善に活かす取組

同社の製品安全への取組は、製品の企画段階からすでに始まっています。

新製品を企画・設計・開発する際、市場動向やトレンド調査に加えて、過去のクレーム情報や返品情報、不具合、事故情報を抽出し、対策仕様を製品に反映しています。

実際に、不具合や事故情報などから誤使用・不注意に対する防止策を立案し、製品設計に反映したケースがあります。

例えば、「ステンレスボトル」について、お手入れ時にフタについているパッキンを外し、その後ボトルを使う際にパッキンを付け忘れたり、誤った付け方をしたりすることにより、ボトル本体とフタとの間に隙間ができ、熱湯が漏れて火傷をするおそれが想定されました。そのため、パッキンと栓を一体化した「シームレスせん」を開発し、ユーザーの不注意による事故の原因を改善しました。

左:改善前のパッキンが付いたフタ/右:改善後の「シームレスせん」
左:改善前のパッキンが付いたフタ/右:改善後の「シームレスせん」

また、同社が販売する「電気ケトル」については、2008年から転倒時の事故を防ぐために「転倒湯もれ防止構造」を搭載し、業界に先駆けて転倒流水への対応を実施し、自社独自の転倒流水試験と要求基準を策定して安全な製品づくりにつなげてきました。

なお、同社が先進的に取り組んでいた転倒流水への対策は、後に経済産業省が日本で販売される電気ケトルなどの安全基準の要件に追加しています。

転倒湯漏れ防止構造が搭載された電気ケトル
転倒湯漏れ防止構造が搭載された電気ケトル

このように、不具合や事故情報などを基に「次」につながる取組を検討し、日々試行錯誤しながらより良い製品を追い求めています。

誤使用事故防止に向けた取組

製品仕様の改善に加え、特に誤使用・不注意による事故のおそれが高い製品については、製品の取扱説明書にあわせて、使用上の注意を記載したチラシを同梱し、製品の正しい使い方をユーザーに届けるための工夫をしています。

また、取扱説明書に記載された二次元コードを読み取ることで、製品のお手入れ方法や使い方についての動画にリンクするような導線設計を行うことに加え、製品本体にも二次元コードを表示して取扱説明書に誘導し、製品の使い方をいつでもどこでも確認できるようにしています。

このような工夫がユーザーの「使いやすさ」につながるとともに、製品事故を未然に防ぐ効果的な情報伝達の手段になっています。

安全な製品をつくり続けるための連携

同社のものづくりには地理的な強みもあります。

企画・開発部門を担う「象印マホービン株式会社」と製造部門を担う「象印ファクトリー・ジャパン株式会社」、アフターサービス・アフターケアを行う「象印ユーサービス株式会社」の3社が隣接していることです。

企画から販売後のお客様サポートまでの関係部門を集約させることで、各社がもつ情報をリアルタイムに共有することができ、問題の特定と改善をスムーズに進めることが可能です。より良い製品をつくるという共通のゴールに向けて、3社間のものづくりのサイクルを通じた製品改良が進められています。

また、所属を横断した連携は、同社の中にも浸透しています。

品質部門では事業部を横断した「品質横ぐし会議」を実施し、製造現場でのサイレントチェンジへの対策や製品事故情報の収集・分析などを行います。各々がもつノウハウを掛け合わせることにより、実施すべき対策を効果的・効率的に進めることができ、問題の早期解決のみならず、社内全体で迅速に品質の統一化・向上を図ることができます。

このように、同社では、ユーザーに寄り添うものづくりの精神と、所属の垣根を越えた連携を核に、安心安全な製品を世に送り出してきました。

最近では、調理家電やリビング用品などの製造・販売だけでなく、「より多くのお客様にごはんのおいしさを知ってもらうこと」を目標に飲食事業にも乗り出しています。炊飯ジャーの最高傑作「炎舞炊き」で炊き上げたごはんを味わえる「象印食堂」「象印銀白弁当」「象印銀白おにぎり」の3つの飲食店ブランドを運営し、ユーザーとの新しいつながりを築いています。

これから先も、私たちの生活をより便利で豊かにするために、安全な製品を通じて、新たな価値を創造していくことが期待されます。

象印食堂の様子
象印食堂の様子

象印マホービン株式会社からのコメント

私たち象印は、お客様に心から満足していただき、「次も象印の製品を選びたい」と思っていただけるような商品開発を目指しています。

製品の基本的な性能を高めることはもちろん、お客様が実際に使う中で感じる「ちょっと不便な点」や「もっとこうだったら」という声に耳を傾け、それを解決する工夫を凝らしています。安全性や使いやすさにも徹底的にこだわることで、毎日の暮らしを豊かにする付加価値の高い製品をお届けしたいと考えています。

特に、近年はお子様のいるご家庭での電気ケトルによるやけどの事故が増えていることから、安全基準が見直されています。象印は、もともと魔法瓶をつくってきた会社です。「熱いお湯が漏れたらやけどをしてしまう」という危険性を誰よりも深く理解しており、創業当時から「安心・安全」への強い意識が会社全体に根付いています。そのため、私たちが2008年から作っている電気ケトルには、工業会基準を上回る象印基準の安全機能を搭載しています。もちろん、卓上に置いて使うものですから、デザインにも満足していただきたいと考えています。しかし、どれだけデザイン性を高めても、そのために安全性を犠牲にすることは決してありません。

これからも、私たちは「暮らしをつくる」という企業理念のもと、お客様の生活に寄り添いながら、「安心・安全」を最重要課題の一つと位置付け、誠実に製品づくりを続けていきます。

象印マホービン株式会社イメージ画像

PSアワード

製品安全対策優良企業ロゴマーク

PSアワードとは、製品安全に積極的に取り組んでいる企業を広く公募し、厳正な審査の上で、「製品安全対策優良企業」として表彰するものです。

本表彰では、各企業が扱う製品自体の安全性の評価ではなく、企業・団体全体の製品安全活動に関する取組について評価します。

そして、受賞企業・団体は、受賞公表日より「製品安全対策優良企業ロゴマーク」を使用して、自ら製品安全対策の優良企業・団体であることを宣伝・広報することができます。

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近畿経済産業局 公式note