テラドローン、クマよけスプレー搭載ドローンを開発・発売開始

Terra Drone株式会社(渋谷区、以下 「テラドローン」)は、クマよけスプレー搭載ドローンの開発が完了したことを発表した。

本製品では、上空からの探索で状況を素早く把握しつつ、オペレーターがクマと安全な距離を保ったままクマよけスプレーを噴射する。クマよけスプレーは、トウガラシ由来の辛味成分「カプサイシン」を主成分とする非致死の防護手段。カプサイシンが目・鼻などの粘膜に強い刺激を与えることで、人間の数千倍の嗅覚を持つクマを一時的にひるませ、突進や接近から退避する時間を確保することができる。環境省や自治体のガイダンスにおいても、遭遇時の有効な最終防護手段として位置づけられている。

クマよけスプレーをドローンに搭載することにより、上空から唐辛子スプレーを遠隔操作で噴射する仕組みにより、クマに接近することなく、背後・側面など全方位から噴射することができる。また、ドローンの遠隔操作により、クマの背後・側面への回り込みや全方位からの噴射ができるため、風向き待ちの時間を減らし、最小限の噴射での対応が可能となる。

オペレーターがドローンを遠隔操作し、クマと操縦者の距離を約500m~1kmに維持、FPVカメラの映像を確認しながら安全な場所で操作する運用を想定している。また、学習能力の高いクマに対し、人や市街地に近づくと強い不快刺激があることを学習させ、最接近の阻止を狙う。各自治体と災害時応援等の協定を結ぶ地域の測量会社・防災事業者等がドローンのオペレーターを担当し、テラドローンが講習等を実施してサポートしながら本製品を提供する。


日本各地でクマの人身被害および市街地付近での出没が記録的水準に達し、東北地方を中心に、住宅地・商業施設・学校周辺といった生活圏での目撃・遭遇が相次ぐなか、秋田県では自衛隊が後方支援に入る異例の対応も実施されている。一方、致死的対応の是非をめぐる多様な意見や要望が自治体に集中する局面が生じ、現場では安全確保と配慮の両立に加えて、説明・相談対応の負荷増が課題となっている。ハンターの不足や高齢化、野生動物の致傷を目的とした常設訓練・運用を前提としない関係機関(自衛隊・警察等)の任務制約により、現場の選択肢が限られるケースが見られている。

テラドローンは、ドローンを活用して社会課題を解決することを目指し、これまで測量・点検・農業分野においてドローンソリューションを開発・提供してきた。2025年1月に発売した自社開発の屋内点検用ドローン「Terra Xross 1」では、従来同等機種比で約3分の1の価格を実現した。クマ被害の深刻化と対策の上での課題を踏まえ、同社の設計・開発のノウハウを生かして、上空からの広域探索とオペレーターの安全確保を両立する手段として、遠隔操作でクマよけスプレーの噴射が可能なドローンの開発に至った。