年間9200万トンの衣料廃棄物は20年前の2倍 自治体と民間でできることとは

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年11月20日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

大量の布のぼろきれ
Copyright: shaire productions / flickr

着なくなった服はどうなるのだろうか。多くの場合、人々は慈善団体が運営するリサイクルショップに寄付する。しかし、衣料品は増え続けており、その価格は下がり、品質も低下している。これにより、寄付された服の価値は以前よりも低くなり、慈善団体にとっては「寄付品」というよりも「廃棄物」に近い扱いになっている。

私たちの最新の調査では、ヨーロッパ、北米、オーストラリアの9都市における衣料品や繊維製品の行方を分析した。その結果、多くの都市で寄付量が急増し、対応が追いつかなくなっていることが明らかになった。ジュネーブでは過去30年間で寄付量が1,200%増加し、1990年の250トンから2021年には3,000トンに達している。世界全体では、衣料品と繊維製品の廃棄量は年間9,200万トンに上り、20年前の2倍に達している。

この急増により、衣料品の地元での処理価値は低下しており、多くの慈善団体は衣料品を埋立地に送るか、リサイクル業者に販売し、グローバルサウスへ輸出するしかなくなっている。

通常、廃棄物処理は地方政府の役割だが、衣料品や繊維製品については慈善団体や転売業者に任せるケースが多い。このシステムはかつて中古衣料が貴重だった時代の名残だが、現在の衣料品の大量生産・大量消費がこの仕組みを崩壊寸前に追い込んでいる。

2024年1月から、EU加盟国は使用済み繊維製品の回収サービスを順次導入する必要がある。一方、オーストラリアやアメリカでは同様の取り組みは見られず、世界で最も繊維製品を消費しているにもかかわらず対策が遅れている。循環型経済を目指す中で、製品を継続的に再利用する仕組みが求められているが、これを実現するためには変革が必要だ。

ゴミ箱の横の廃棄された衣類
ポルトガル・リスボンのゴミ箱の横に廃棄された衣類。著者提供

繊維廃棄は新しい問題

かつて繊維製品は生産が困難で貴重なものとされていたため、可能な限り長く使用され、布切れなどに再利用されることが一般的だった。天然繊維であれば自然に分解されるか、エネルギーとして燃焼されることが多かった。

しかし、合成繊維や化学的な仕上げ工程の増加により、多くの衣料品が自然分解できなくなった。ファストファッションは、高級ファッションのトレンドを低価格で再現することによって成立しており、これはポリエステルなどの合成繊維があってこそ可能となっている。こうした服は短期間しか着用されず、その後すぐに寄付または廃棄されることが多い。

続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。

  • 記事本文残り71%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。