観光白書を閣議決定 7月の出国税引き上げで関連予算2.7倍に

政府は2026年7月10日、「令和8年版観光白書」を閣議決定した。2025年の訪日外国人旅行者数は4268万人(前年比15.8%増)、旅行消費額は9兆4549億円(同16.4%増)と、いずれも過去最高を更新。日本人の国内旅行と合わせた国内総旅行消費額も37.6兆円(同9.6%増)に達した。全体の数値は好調な一方で、外国人延べ宿泊者の約7割が三大都市圏に集中し、地方部は3割程度にとどまるなど、需要の地域的な偏りが改めて課題として浮かび上がった。

こうした現状を踏まえ、2026年度は3月に閣議決定された「第5次観光立国推進基本計画」の3本柱に沿って施策を展開する。すなわち、(1)インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立、(2)国内交流・アウトバウンド拡大、(3)観光地・観光産業の強靱化だ。2030年に訪日客6000万人・消費額15兆円とする政府目標の達成に向け、地方誘客の推進と、混雑やマナー違反といったオーバーツーリズムの未然防止・抑制に施策の重心が置かれている。

2026年7月1日に1人あたり1000円から3000円へ引き上げた国際観光旅客税(出国税)をこれらの施策に充てていく。財源拡大により関連予算は2025年度の490億円から1300億円へと2.7倍になった。増額分は、地方誘客やオーバーツーリズム対策など、これまで手薄だった新たな課題への重点配分が想定されている。

具体的な施策は多岐にわたる。インバウンド分野では、地方誘客・消費拡大に効果の高い観光コンテンツの充実に加え、観光DXや省力化投資による生産性向上、ユニバーサルツーリズムをはじめとする多様なニーズへの対応を進める。受入環境では、天候トラブル時の空港旅客滞留・混雑防止、チェックインの自動化、空港アクセス鉄道の機能強化などを支援。地域の混雑緩和に向けたパーク&レールライドや、ローカル鉄道の観光資源化も後押しする。国内交流・アウトバウンド面では、ワーケーションの推進や休暇の分散による旅行需要の平準化、関係人口の創出、双方向交流に向けた環境整備を図る。

今回の白書がテーマ章に据えたのは、観光産業の足腰を左右する宿泊業の人材確保と生産性向上だ。宿泊業は賃金が全産業平均を下回り、年間休日日数が少なく、非正規雇用比率や研修の不実施率が高いといった構造的課題を抱える。政府は設備投資や人材育成への支援を通じて収益性・生産性を高め、その成果を賃金や待遇の改善につなげる方針を示した。「住んでよし」「訪れてよし」に「働いてよし」を加えた持続可能な観光地域づくりが、2026年度施策を貫くキーワードとなっている。