2024年パリオリンピック、デング熱の超拡散イベントになる可能性
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年6月12日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
2023年9月、フランスのパリで複数の人々がデング熱に感染した。蚊が媒介するこの病気が注目された理由はふたつある。ひとつは、これまでで最も北方での発生であったこと。もうひとつは、感染者が最近どこにも旅行していなかったこと。これは、デング熱が北ヨーロッパで局地的に伝播する可能性があることを示している。
これらの事実が2024年に重要視されるのは、ご存じの通りオリンピックがあるからだ。フランス政府は、アスリート、観客、関係者、観光客などが合計で1,000万人以上パリに集まると予想している。そしてデング熱のリスクも認識しており、パリでは数百箇所でデング熱を媒介する蚊の存在が定期的に確認されている。さて現状、対策は十分なのだろうか。
感染症疫学におけるスーパースプレッダー(※周囲への感染力と死亡率が高い患者のこと)の概念は新しいものではない。基本的には人口のごく一部、場合によっては1人だけが大規模な感染の原因になるような事例はこれまでにも多くある。歴史的に有名なスーパースプレッダーには「チフスのメアリー」が挙げられる。メアリー・マロンは無症状の腸チフスキャリアで、100人以上に感染させたと見られている。
Nature誌に掲載された研究によれば、中国の湖南省では約15%の人々がCOVID-19の85%の感染例を引き起こしたとされる。デング熱に関しては、超拡散イベントに関するペルーでの分析において、デング熱感染例の半数以上が、人間が居住するエリアのたった8%で発生していることが示唆されている(※デング熱は人間同士で直接感染するのではなく、デング熱を媒介する蚊に刺されることでのみ感染することに注意)。
オリンピックがウイルス流行のリスク要因として指摘されたのは今回が初めてではない。2016年のブラジルオリンピックでは、ジカ熱(デング熱と同様にヤブカ属の蚊が媒介する感染症)への懸念から、開催が延期される寸前までになった。しかしその時は最終的に報告された感染例はなく、心配は解消された。
東京オリンピックでは、COVID-19の拡散を防ぐために厳しい対策が講じられた。その結果、「バブル方式」で隔離されたオリンピック関連施設での感染は少なかったが、一般市民の間では感染例が増加した。
では今回、パリでは何が異なるのか?
続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。
-
記事本文残り57%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。