富士通と日本IBM、ヘルスケア領域での協業を具体化 医療向けソブリンクラウド基盤の構築と医療AIソリューションの相互活用へ

富士通株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、2025年9月に発表していた協業検討のうち、ヘルスケア領域における協業を具体化すると発表した。データ連携を加速化させるための医療向けソブリンクラウド(自国の法的管轄下で管理できる性質を備えたクラウド環境)基盤を構築するとともに、両社の医療AIソリューションを相互活用する。両社は、医療機関の運営効率化とデータ活用の高度化を進めることで、医療業界が抱える構造的課題の解決を目指す。

協業の柱は二つだ。第一に、医療向けソブリンクラウド基盤の構築。富士通のソブリンクラウド環境を共通の基盤としつつ、その上で富士通と日本IBMがそれぞれ提供する電子カルテソリューションを稼働させる構成を構築する。これにより、医療機関は、データ主権やセキュリティに配慮されたクラウド型の医療情報システムを利用できるようになる。

第二に、医療データ活用とAIによる医療業務の高度化。両社が持つ医療業界向けAIソリューションを相互活用し、患者・医療機関の合意のもと、複数の医療機関のデータを安全に連携・活用する。具体的なユースケースとして、診療記録や看護記録などの医療文書作成支援、DPCコーディング(診断群分類に基づく診療報酬請求の分類作業)をはじめとする現場業務の効率化に資するAI活用の実装を進める。これにより、医療従事者が本来業務に集中できる環境の実現を目指す。

加えて、両社は治験に適した患者の探索や臨床研究の効率化など、医療と創薬の連携を加速するユースケースを検討し、一部着手もしている。両社が複数の医療機関と連携を進めることで、それら医療機関のデータをオンデマンドかつ横断的に活用することを推進し、患者一人ひとりに最適な治験機会が提供されることを目指す。

協業の体制としては、富士通が共通のクラウド基盤を提供し、その上で両社がそれぞれの電子カルテソリューションを稼働させる構成をとる。AI領域では両社の医療AIソリューションを相互活用する形での役割分担となる。大学病院やナショナルセンターをはじめとする医療機関と連携しながら、医療データ活用およびAIのユースケースの検証と段階的な展開を進めていく方針だ。今後は、複数の医療情報システムとの連携・拡張も視野に入れ、医療機関と協働してデータ・AI活用のユースケースを拡充することで、医療の質向上と効率化の両立を目指す。さらに将来的には、医療機関の予約から治療後のフォローアップまでをカバーする患者起点のヘルスケアサービスの実現に向けても、検討を進めていくとしている。

日本の医療は、高齢化を背景に医療需要が拡大し続け、医療費は年間48兆円を超えている。一方で、その需要に応える医療提供体制は、社会保障給付財源の継続性、医療人材の減少、医療機関の経営難といった複合的な課題に直面している。高度な臨床研究・開発をさらに発展させていくために必要なデータは、標準化や構造化の途上にあり、十分な連携・活用には至っていない。本協業は、国が推進する医療データ利活用基盤の整備や医療DX施策を補完しながら、医療機関の運営効率化とデータ活用の高度化を進めるものと位置づけられる。