三次市×スターライト工業 産学官連携で三次市の課題解決を目指す

広島県三次市はスターライト工業、事業構想大と連携し、事業創出・人材育成プログラム「三次市みらい価値共創プロジェクト研究」を実施した。地域課題解決とそれに資する人材の育成を目指す枠組みづくりの狙いについて三次市長の福岡誠志氏、スターライト工業代表の西郷隆志氏に聞いた。

三次市長 福岡誠志氏

研究員の多様な視座が
施策作りのヒントになる

広島県北東部に位置する三次市は農業、製造業、観光業のバランスが取れた産業構造を形成しているが、近年は人口減少、高齢化による産業の担い手不足が深刻化している。2024年に策定した第3次三次市総合計画「みよし未来共創ビジョン」では、目指すまちの姿として「人と想いがつながり、未来につなぐまち」を掲げ、多様なつながりによる「ツナガリ人口」の拡大を目指している。

スターライト工業(大阪府大阪市)は、2024年に広島工場が設立50周年を迎えたことを契機に、三次市と「女子野球の発展・普及支援等に関する連携協定」「災害時における支援協力に関する協定」を締結。結びつきを深める中で、同社が同市に対し実施した企業版ふるさと納税の財源を活用する形で、「三次市みらい価値共創プロジェクト研究」を発足。10人の研究員を一般から公募した上で、事業構想大学院大学の教育研究プログラムを通して、2025年7月から2026年3月にかけて20回の講義を行い、研究員各自が実践を見据えた事業構想計画書を策定した。

三次市長の福岡誠志氏は、「三次市は古くから水害に悩まされてきた地域であり、市民の生命・財産を守るために防災・減災の取組に力を入れています。本市が抱える課題は複雑化しており、その解決には多様な主体による連携・つながりが必要です。今回、研究員の皆さんが真剣に課題に向き合い、アイデアをいただけたことに大きな価値を感じています。また、域外、異業種の研究員が本市の様々な課題に向き合っていただき、ツナガリ人口の輪が一層広がったと感じています」と語る。

研究会には市の職員もオブザーバーとして参加しており、研究員の多様な考えに触れることで、職員の視野も拡がったという。

「今回、地域貢献を考えるスターライト工業さんの働きかけにより研究会を開催し、一緒になって地域課題の解決に一歩踏み出すことができ、景色の見え方が変わりました。今後も産官学連携によって地域課題の解決に取り組んでいきたいです」(福岡氏)

地域に踏み込み、実践的な
課題解決を通じ事業化へ

スターライト工業株式会社 代表取締役社長 西郷隆志氏

工業用プラスチックメーカーのスターライト工業は、自社商品として災害用トイレなども製造。滋賀県・広島県・山口県に生産拠点を持ち、多くの自治体と「災害における支援協力に関する協定」を締結している。「協定を結んで終わりではなく、具体的に現地に入り込み、何がお役に立てるかを考え、新たな活動を起こしてきました」と同社代表取締役社長の西郷隆志氏は語る。三次市とも、市の防災フェアなどで災害用トイレに関する体験会を開催してきたほか、三次市の女子硬式野球クラブチーム「三次ブラックパールズ」のトップパートナーとして、選手の働く場づくりにも取り組んでいる。

「モノづくりを行うだけでなく、社会の困りごとを事業化したいと感じていた時に、事業構想大学院大学の田中克徳客員教授から、地域に踏み込んで実践的な課題解決を通じて事業化を模索してみてはどうかとアドバイスを受け、研究会の立ち上げに至りました。福岡市長と対話をする中で、地域のために新しいことをしたいという思いが掛け合わさったことにも後押しされました」(西郷氏)

プロジェクト研究には同社社員も参加しており、研究員同士で刺激をし合いながら、互いの構想作りに貢献することができたという。社員が提案した、平時はキッチンカーとして使い、有事の際にはEVとして電力供給もできる「ソーラーEVキッチンカー」の事業構想については、社内で事業化に向けた取り組みをすでに進めている。

「平時と非常時の両面で検証しながら、それをまた研究員の皆さんにも共有して刺激にしていきたいです」(西郷氏)

研究員同士の議論の場の
維持・継続へ後押し

「三次市みらい価値共創プロジェクト研究」の修了式の様子

プロジェクト研究は2026年3月までで終了したが、両者はすでに次の展開を見据えている。

「さまざまな背景を持った研究員の皆さんの事業構想に触れることで、今までも官民連携による課題解決を模索してきましたが、いろいろな人の思いを汲み取って施策を考えていかなければならないということに改めて気づかせてもらう良いきっかけになりました。今回の取組を、今後の施策づくりに生かしていきたいと考えています」(福岡氏)

「研究会は、社会の困りごとを事業化していくための場として機能しました。今後は、『共創プロデューサー』として、研究員の皆さんから出てきたアイデアや事業構想案をさらにステップアップさせるための議論ができるよう場を続けるとともに、研究員同士がお互いに刺激し合う場となっているこのつながりが維持できるよう、後押ししていきたいです」(西郷氏)

 

「三次市みらい価値共創プロジェクト研究」の修了生の声

●事業化への道筋を学ぶ機会に 田原岳治氏
退院後の在宅リハビリに携わってきた理学療法士としての経験から、「退院直後の3カ月」という公的サービスの空白期間に着目した短期見守りサービスの事業を構想しました。研究会では、多様な経験を持つ実務家のアドバイスが得られ、どこに事業機会があるのか道筋が見えるようになりました。40くらいの事業アイデアを考え付いたので、学んだメソッドを生かしながら、事業化にチャレンジしていこうと思います。

●地域課題解決アイデアをカフェで募る 村尾直哉氏
普段は地域活動に参加していない一般市民の本音を拾うことを目的に、地域のカフェで、地域課題に対してアイデア・意見を回答するとコーヒー1杯が無料になる事業(「かだいコーヒー」)を構想しました。研究会では、実際に島根県浜田市と三次市のカフェで実証実験を行うことによって課題も見えてきました。今後はさらに拠点を増やして「かだいコーヒー」に取り組むとともに、どこからお金を得て事業を回していくかを考えているところです。