イギリスの労働党新政権、「150万戸の住宅建設」公約に必要な政策は

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年7月15日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

2024年7月の英国下院議会選挙で政権交代を実現した労働党の新政権は、深刻な住宅不足に対処するため5年間で150万戸の住宅を建設するという大胆な公約を掲げている。

これを達成するためには、前政権が同じ期間に達成した量の1.5倍の住宅を供給しなければならない。

さて、これは実現可能か?そして、どのような障害を克服する必要があるのだろうか?

労働党は、経済成長を促進し、新規開発のペースを遅らせてきた問題に対処するにあたって、土地利用や都市開発に関する政策や規制の枠組みを改革することが重要であると公表している。

また、労働党は上記の他にもいくつかの公約を掲げている。地方住宅目標の再導入、地方自治体における計画担当者の増員、低所得者層向けの住宅支援、ブラウンフィールドサイト(※かつて工場、倉庫、商業施設などに使われていた未利用の土地のこと)の優先活用、都市の過剰な膨張を防ぐための緑地帯である「グリーンベルト」内の廃棄地や未使用の駐車場といった「グレーベルト」地域での開発許可(新世代のニュータウン建設を含む)などだ。

7月17日の国王演説では、これらの政策を実現するための法案についても述べられた。

マンチェスター大学 計画・不動産・環境管理学科(Department of Planning, Property and Environmental Management)の教授として、長い間需要を下回っていた住宅供給量を増やすというこの野心的な計画を称賛するが、手っ取り早く効果を生むために手続き簡略化や規制緩和、改革を急ぐことについては慎重であるべきだ、と警鐘を鳴らしたい。

まず、この規模の開発は前例がないため、政府が認識しているように、より多くの熟練した建設労働者、建築確認審査員、地方自治体の計画担当者などを確保しなければ実現は難しいという疑問がある。

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