経産省 宇宙戦略基金の重点支援テーマを発表、民間ロケットなど

経済産業省は2026年2月25日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設置された「宇宙戦略基金」について、事業全体の制度設計を定める「基本方針」の改定と、経産省計上分の実施方針・第三期技術開発テーマの策定を発表した。2025年度補正予算の2000億円のうち経産省計上分は740億円で、民間企業における実証の加速に重点を置いた5テーマに投じる(下表参照)。

経産省は、国際市場で勝ち残る意志と技術、事業モデルを有する企業を重点的に育成・支援する方針を打ち出している。第三期は、民間ロケット打上げ実証加速化に最大規模の予算、240億円を充てる計画だ。「2030年代前半までに国内打上げ能力を年間30件程度確保」という基本方針の目標に向け、信頼性と国際競争力を持つ民間ロケット打上げ事業者を2者以上創出することを目標とする。

宇宙交通管理の自律性確保に向けた取組の支援には150億円を用意した。衛星コンステレーションの拡大に伴い、宇宙空間の混雑化と衝突リスクが高まる中で、自前の観測システムやデータ基盤を整備し、国際ルール形成に能動的に関与することを目指す。

(1)民間ロケット打上げ実証加速化 事業化初期段階にある民間ロケット打上げ事業者に対し、最大6回の打上げ実証を支援。補助率は打上げ実証の初期段階ほど高く設定し、段階的に逓減させる設計。スタートアップ・中小企業は前半(最大3回)が4分の3、後半が2分の1。 支援総額(最大):240 億円程度
1件あたり120 億円を上限とし、2件程度を採択
(2)ロケット飛行運用の効率化・高機能化 (A)飛行解析・飛行安全解析の効率化(上限30億円、1件程度)と、(B)ロケット追跡の可能範囲拡大と低コスト化(上限15億円、2件程度)の2サブテーマで構成する。 支援総額(最大):50 億円程度(打上げ・軌道上実証費用を含む)
(3)宇宙交通管理を見据えた自律性確保に資する事業化加速 (A)宇宙交通管理(STM)に資するデータ基盤の拡張(上限50億円、2件程度)、(B)衛星運用基盤の高度化(上限40億円、1件程度)、(C)サイバーセキュリティ基盤の整備(上限10億円、1件程度)の3サブテーマで構成する。 支援総額(最大):150 億円程度
(4)デジタル技術を前提とした衛星開発・製造プロセスの刷新及び機能高度化の技術開発・実証 (A)衛星開発・製造プロセスにおける協調領域の標準化(上限100億円、1件程度)と、(B)衛星開発・製造プロセス高度化技術の開発・実証(上限65億円、2件程度)の2サブテーマで構成する。 支援総額(最大):230 億円程度(打上げ・軌道上実証費用を含む)
(5)宇宙実証機会の拡大に資する衛星を活用した軌道上実証の低コスト・高頻度化技術の開発実証 衛星を活用した軌道上実証サービスの実証プロセスを効率化・迅速化し、年間4回以上の高頻度な実証機会の提供体制を構築する。契約締結から打上げまでのリードタイムを最長1年程度以内に短縮、海外サービスに対して競争力ある価格の実現を目指す。半導体・創薬など他産業からの微小重力環境での実証・製造ニーズの高まりにも対応、スタートアップを含む多様なプレーヤーの宇宙空間活用を後押しする。 支援総額(最大):48 億円程度(打上げ・軌道上実証費用を含む)

第5次宇宙基本計画では、宇宙機器・ソリューションの市場規模を2020年の4兆円から2030年代早期に8兆円へ倍増させる目標を掲げている。経産省の実施方針の前文では、日本が「限られた内需に対応する『一品もの』の開発体制から脱却する過渡期」にあると指摘。現状維持は成長する宇宙市場の獲得を逃すだけでなく、安全保障上のリスクにもなり得るとの危機感が示されている。

宇宙戦略基金の基本方針の改訂は内閣府・総務省・文部科学省との同時発表。文科省は実施方針で、洋上からのロケット打上げや月・小惑星の資源活用に向けた技術など、先端技術開発を中心に9テーマを策定。総務省は衛星通信セキュリティや月・地球間通信など通信技術を中心に5テーマを定めた。今後は基本方針とそれぞれの実施方針に基づき、JAXAが各テーマの公募を実施する。基本方針には、事業の成果を政府調達につなげる仕組みや、他産業からの宇宙分野参入の促進、国際共同研究・実証(Co-funded事業)の推進も盛り込まれた。官民一体で宇宙産業の国際競争力強化を加速する。