原材料高の中、食品メーカーの戦略は? 味の素vs明治HD

コロナ禍は、食品メーカーにもさまざまな影響をもたらし、家庭用の冷凍食品などが好調だった反面、業務用食品は打撃を受けた。足元では、原油高や国際情勢の変化によって商品価格値上げを余儀なくされている。大手食品メーカーは今、どのような未来を見ているのか。味の素と明治のプランを見る。

世界的課題の解決に力を注ぐ食品大手2社

コロナ禍による巣ごもり需要の定着は、食品メーカーにもさまざまな影響をもたらした。多くの企業で、家庭用の冷凍食品などが好調だった反面、業務用食品は打撃を受けた。足元では、原油高や国際情勢の激動によって商品価格値上げを余儀なくされるなど、回復基調ながらも不透明な商況が続く。長期的に国内市場の縮小が見込まれる中、大手食品メーカーは今、どのような将来設計を描いているのだろうか。

まずは、1909年創業、アミノサイエンスによって世界にその名を知られる味の素。

味の素は、「2020-2025中期経営計画」において、「食と健康の課題解決企業」に生まれ変わることを掲げ、アミノ酸の働きで世界の健康寿命を延伸し、生活習慣を改善することに貢献することを目指す。その一環として、2020年にはアクセラレータープログラムを立ち上げ、蚕を原料にした次世代食品を開発するエリーなど6社との協業を実施した。また、同年、CVCも設立して、「完全食」による一人ひとりの「Well-Being」を目指す事業、代替タンパク質の開発など地球的課題の解決につながる事業などを重点に投資を進めている。

2022年3月には、イスラエルの培養肉製造スタートアップSuper Meat社への出資も決めた。細胞から食肉に育てる培養肉ビジネスは、将来の世界人口増加などから懸念される、世界的な食糧不足、タンパク質供給クライシスの解決に向けて、今後の市場拡大が予想される。「食と健康の課題解決」を目指す上で、きわめて意義ある投資といえそうだ。

もう一社は、1916年創業、牛乳やヨーグルトで圧倒的な国内シェアを誇る明治だ。

明治もまた、「明治グループ2026ビジョン」の中で、100年の歴史で培った強みと新しい技術や知見を融合させて、「食と健康」の新たな価値創造を将来像に掲げる。そのために必要な新領域への挑戦において重視するのは、健康寿命延伸に向けた免疫領域における貢献と、外部との連携による、社内外での事業創出だ。2021年に実施したアクセラレータープログラムでは、ウェアラブル端末によるヘルスケアを目指す企業、不妊治療AI検索サービスを展開する企業など、多彩な事業を採択した。また、植物由来タンパク質技術を持つスタートアップなどに特化した米国VCのファンドにも出資している。

味の素は海外の売上高比率が5割を超えるが、明治の海外展開はまだこれからの段階で、その強化も大きなテーマだ。「ビジョン」では、海外売上高比率20%を目指し、特に中国では、新工場稼働により、牛乳・ヨーグルトの2023年度売上高を、2020年度比4倍にするなど、大幅な生産能力拡大を計画する。

日本を代表する食品メーカー2社は今、世界の食と健康に貢献しつつ、世界が抱える課題に向き合うことを今後の成長の原動力とし、100年を超える長い歴史の中で蓄積された膨大なノウハウと知見のすべてを、そこに注ぎこもうとしている。

両社の概要

味の素

設立 1925年(創業1909年)
所在地 東京都中央区
代表 藤江 太郎(代表執行役社長、最高経営責任者)
資本金 798億6, 300億円(2021年3月)
従業員数 連結:33, 461名(2021年3月)
主な
事業内容と
グループ会社
●調味料・加工食品:味の素食品、デリカエース、ヤマキ など5社
●冷凍食品:味の素冷凍食品
●油脂:J-オイルミルズ
●飲料:味の素AGF
●アミノ酸:味の素ヘルシーサプライ、日本プロテイン など4社
●医療・健康:EAファーマ、味の素コージンバイオ、ジーンデザイン
●その他:F-LIFE、味の素エンジニアリング など12社
●海外法人:ヨーロッパ/アフリカ13社、アジア41社、
 北米/中南米10社

出典:ホームページ

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