空飛ぶクルマメーカー対決! SUBARU VS. スズキ

電動で垂直離着陸ができるモビリティー、いわゆる「空飛ぶクルマ」の登場は、「100年に一度の移動革命」と言われ、渋滞緩和や環境負荷低減、パーソナルな移動の新たな手段として注目される。この新分野への参入を着々と進める大手2社の動向は…

着実に進む大手2社のモビリティ革命

クルマは今「100年に一度の変革期」を迎えている。インターネットにつながり、自動運転が可能になり、所有だけでなくシェアリングも普及し、電動化が進んだ。 この流れはConnented、Automated、Sharing、Electrifiedの頭文字をとって「CASE」とも呼ばれてきた。一方、ドローン技術の急速な進化とともに、主に近距離移動手段として「空飛ぶクルマ」という新たなモビリティの開発が世界中で進み、クルマの概念そのものも大きく変わってきた。明確な定義はないが、電動で、垂直離着陸の可能な移動手段が「空飛ぶクルマ」と呼ばれる。国内では、スタートアップのSkyDriveが大阪万博での運用に向けて準備を進めているほか、大手メーカーも着々と開発を進める。

SUBARUもその1つ。SUBARUの前身は、1917年創業の「飛行機研究所」をルーツとする「中島飛行機」であり、現在も航空宇宙部門において、民間、防衛、ヘリコプターを三つの柱に多様な航空機を開発する。1958年の「スバル360」発売以降蓄積してきたクルマの技術と、歴史ある航空関連技術が「空飛ぶクルマ」の開発において融合するのは必然の流れだ。昨年の新経営体制における方針でもクルマの「電動化計画のアップデート」が示されたが、「空飛ぶクルマ」の開発もこれに平行するプロジェクトと言える。

昨年の「ジャパンモビリティショー」のSUBARUブースでは、コンセプトカー「スポーツ モビリティ コンセプト」が発表され、その上方に「空飛ぶクルマ」である「エアモビリティ コンセプト」も展示された。単なるモックアップではなく、既に飛行実証実験も行われたという。幅4.5m、全長6m、一人乗りで、クルマのデザインを意識して車輪に当たる位置にプロペラ類が配置されている。SUBARUが提供価値として掲げる「安心と愉しさ」を追求し、「EVとして何ができるか」をテーマに開発されたというSUBARUならではの「空飛ぶクルマ」の今後が注目される。

一方、スズキは、2022年、SkyDriveに出資、事業・技術提携協定を締結して以降、「空飛ぶクルマ」の開発を加速している。2022年にはSkyDriveが100%出資する製造子会社が設立され、製造にはスズキが所有する静岡県磐田市の工場が活用される体制が整った。

スズキは、1929年、「鈴木式繊機」として創業し、1954年に「鈴木自動車工業」に社名を変更、バイクと軽自動車の分野で多くの人気モデルを生み出してきた。1965年には船外機部門にも進出、1974年以降、高齢者向けの近距離移動機器の開発も続けている。そして、二輪、四輪、マリン事業によって陸と海のモビリティを提供してきたスズキが今見据えるのが空だ。SkyDriveが開発中の「SD-05」は「SKYDRIVE」と命名され、全長13m、幅13m、最大3名が乗車できる。「ジャパンモビリティショー」では、その5分の1スケールのモデルが展示された。今後、スズキの主戦場の一つであるインドの観光地での運用に向けた準備が進められるという。スズキの基本方針「小・少・軽・短・美」のもとで培われた軽量化・電動化技術が集約された「空飛ぶクルマ」のこれからの展開に期待が高まる。

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