市場を自分たちでゼロから創り、世界初の製品を開発する

全国の母親の投票で選出される日本マザーズ協会主催の「マザーズセレクション大賞」。2022年度はシースターの電動鼻水吸引器「メルシーポット S-504」が受賞した。制御機器メーカーとして創業した同社は今、乳幼児向け医療機器分野で独自ブランドを展開し、ベストセラー商品を次々に生み出し続けている。

山藤 清隆(シースター 代表取締役)

センサー技術の開発から
福祉・医療機器の開発へ

シースターは、代表の山藤清隆氏が1987年に創業。現在は医療機器メーカーとして知られているが、創業当初はセンサーの技術を応用し、コピー機の紙詰まり検知や紙サイズの自動識別センサー、ラスベガスなどのカジノで使われる偽札検知センサーなどを受注・開発していた。

「鉄道駅で転落事故を防止する安全柵に取り付けて、危険なエリアに人が立ち入ると電車を自動停止させたり、電車を出発させないようにしたりするセンサーも開発しました。現在、都内の東急線全線の安全柵に当社のセンサーチップが組み込まれています。しかし、こうしたセンサーは一度取り付けると頻繁には更新されないため、継続的に利益をあげることが困難です。そのため、新たな事業の柱を模索していました」と山藤氏は当時を振り返る。

同社の転機となったのは、職業能力開発総合大学校に勤めていた古野二三也教授との出会いだった。当時、視覚障がい者用の電子杖の開発に取り組んでいた古野氏から、杖に内蔵するセンサーを小型化する技術について相談されたのだ。杖は地面の障害物は感知できるが、空間の障害物は感知できない。そのため、顔に怪我を負う視覚障がい者が非常に多かった。この課題を解決するため、古野氏はセンサーを杖に内蔵したいと考えていたという。山藤氏はそれを聞き、センサーを内蔵した杖の開発を決意。開発費捻出のために産業技術総合開発機構の第1回福祉助成事業に応募し、助成企業に選出された。

「そして1994年、センサーが障害物を感知して、手元を振動させて危険を知らせる杖を完成させました。すると、視覚障がい者の人たちが大変喜んでくれたのです。自分が開発した技術によって人が喜ぶ姿を実際に見たのは初めてのことだったので、非常に嬉しかったですね」

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