デジタル政府に関するニーズ調査 住民が行政DXに求めるもの

国際大学・櫻井准教授とサイバーエージェントは、デジタル化に対する人々の望みを知るために、デジタルガバメントに関する住民ニーズについてのオンラインアンケート調査を実施した。行政オンラインサービス利用の意向が高い人は、コミュニティの助け合いを重視していることなどが分かった。

住民はデジタルに何を
求めるのか?を理解したい

2020年初からの新型コロナウイルスの影響で、日本のデジタル活用の弱さが浮き彫りになった。もちろんそれまでも、デジタル活用やデジタル競争力についての各種国際調査で日本は、世界のトップ集団から少し離れたところにランクインすることが多かった。このような調査は人材、インフラ、サービス、新規事業創出、パテント、教育、国際化など、様々な観点からデジタル活用を評価しているため、一概に「デジタル化」といっても日本が強い分野(例えばモバイルブロードバンドなどのインフラ普及率は世界のトップ)ももちろんある。

2021年9月にはデジタル庁ができて、国民向けのデジタルサービスを意識した組織構成となった。省庁間の縦割りを乗り越え、真に国民に必要とされるデジタル化が進むことに期待したい。

今回ご紹介するのは、筆者が(株)サイバーエージェントと共同で2021年2月に実施したデジタルガバメントに関する住民ニーズについてのオンラインアンケート調査結果である。世界でも有数の普及率を誇るモバイルブロードバンドインフラなどを活用した行政のデジタルサービスを設計するにあたって、利用者(住民)側のニーズを明らかにしようとした調査だ。「そもそも住民(私たち)がデジタルガバメントに求めていることは何だろう?」という素朴な問いから始まった。サービス提供者(本調査の文脈でいうと自治体などの行政組織)は、デジタルニーズの高い人の特徴や、デジタル化についていけない人々の存在、それぞれの人々が行政のオンラインサービスにどのようなニーズを持っているか、把握できているだろうか?

デジタル社会における地域の
つながりと暮らしの理想を考える

この調査では、デジタル化やデジタルガバメントに関する各種の先行研究に基づいて、「エンゲージメント(つながり)」と「ウェルビーイング(暮らしの理想)」を使った概念モデルを作成した。行政からの情報発信、行政とのコミュニケーション、災害/新型コロナ/マイナンバーカードを使った行政サービス、パーソナライズサービスの利用意向などの質問項目を設計した。

エンゲージメントはデジタルガバメントの新しい価値として、国際的な研究の中では10年ほど前から注目されている。本調査では、エンゲージメント=自治体との「近さ」と捉えて、どのような時に「近さ」を感じるのかを聞いた(図1)。

図1 エンゲージメント(街との近さ)とデジタルガバメントのニーズ

 

今住んでいる自治体との近さを感じるのは、「地域のイベントに参加したとき」との回答が最も多くなった。加えて、このように回答した人々のデジタルニーズが高いことも分かった 。紙幅の関係で全ての質問項目をご紹介できないが、他の質問でも、行政のオンラインサービスの利用意向が高い人は「参加」や「近隣コミュニティの助け合い」に生活の価値を置いていることが判明した。デジタル活用の強みは情報やサービスの個別最適化だが、だからといって個人主義に走る必要はないようだ。住民が実感できる形で地域コミュニティのつながりを強め、助け合いの文化を醸成することが、デジタルニーズにプラスの影響をもたらす。

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