スタートアップと並走するVC立ち上げとDeNA南場氏との出会い

スタートアップ投資を専業とする日本テクノロジー・ベンチャー・パートナーズ(NTVP)は、DeNAの起業と成長に深くかかわっていた。連載第5回では、2000年代前半のDeNA創業を中心に、スタートアップエコシステムの萌芽期の状況を紹介する。

日本のベンチャー投資の軌跡を振り返る当連載。前回は、村口和孝氏がJAFCOを退職後に日本テクノロジーベンチャーパートナー(NTVP)を立ち上げ、投資活動を開始した前後の状況を紹介した。まず、日本の第1号となるLPS(投資事業有限責任組合)を1998年11月に組成した。投資事業有限責任組合法直後のことである。ここに、株式会社ではないVCによる投資ファンドが誕生した。

制度未整備の下では、GP(ジェネラルパートナー・無限責任組合員)は村口氏個人であり、LP(リミテッドパートナー・有限責任組合員)も村口氏が全国行脚して集めた個人であった。一号ファンドとして堀場雅夫氏等10人から3億3000万円集め、NTVPは年間3%の管理報酬を得る。早速にスタートアップを発掘して投資する活動が行われた。

NTVPが投資活動を開始する際、個人から資金を集めた。
写真は一号ファンドLPとなった堀場雅夫氏夫妻と村口氏

投資とともに経営支援
3社が上場にこぎつける

最初の1年間で投資した5社のうち3社が上場を果たしたことは、村口氏の目利きの能力もさることながら、資金とマネジメントの両面から投資先をサポートするハンズオン投資が実を結んだと見ていいだろう。その3社とは投資順に、現在のイメージワン(2000年上場)、現在のアステリア(2007年上場)、DeNA(2005年上場)である。

村口氏の当初の構想は相当大きいもので、翌年にはそれら投資先を早期上場させたいと願っていた。シリコンバレーのインターネット企業は創業から1年程度で上場していたので、日本でもそれを実現させたかったのだ。さらに、スタートアップ専門の弁護士事務所やテック向けのインベストメントバンクや新興企業のための証券取引所を整備させたいという構想もあった。ところが2000年にドットコムバブルが弾けてしまい、DeNAどころか第一号ファンドの投資先は全て失敗に終わるかもしれないと覚悟したと村口氏は振り返っている。

さて、本号で紹介するDeNAは、1999年3月に、マッキンゼーから飛び出した南場智子氏、川田尚吾氏、渡辺雅之氏によって設立された。村口氏は同年7月に、南場氏の夫である紺屋勝成氏から紹介を受けた。事業企画書を見ると、まだ煮詰まっていない。投資を断わろうとしたものの、南場氏は、「直しましたので見てください」と言ってまた持ってくる。諦めない、しつこい人だなと思ったと、村口氏は振り返る。

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