ジェネリック医薬品メーカー対決 サワイGHDvs東和薬品

ジェネリック医薬品の使用割合は、政府目標の80%をほぼ達成したが、昨今の不祥事によって、業界への信頼感が揺らいでいる。市場が混乱するなか、大手ジェネリック医薬品メーカーはどう対応するのか。サワイグループホールディングスと東和薬品の戦略を見る。

医薬品安定供給に向けた取り組みを加速する大手2社

近年、ジェネリック医薬品は着実に普及し、2022年9月時点の数量割合は79%となった。2020年9月までに使用割合を80%に、という「骨太の方針2017」に掲げられた政府目標はほぼ達成されている。ただ、2020年以降、ジェネリック医薬品業界では不祥事が相次ぎ、業務停止命令などの影響から多くの医薬品の供給が止まった。新型コロナ・インフルエンザの同時流行と相まって、薬剤供給の先行きは不透明な状況が続く。そうしたなか、大手ジェネリック医薬品メーカーは、製造・品質管理体制をあらためて強化しつつ、業界全体の信頼回復に向けた歩みを粛々と進めている。

その1つ、1929年創業のサワイグループは、早くからジェネリック医薬品についての啓発も積極的に行うなど、業界のリーダー的存在である。2021年に持株会社体制に移行し、現在、沢井製薬、化研生薬など国内4社、米国アップシャー・スミスなどの事業会社を傘下に持つ。前中期計画では、ジェネリック医薬品の需要拡大政策を見据え、アップシャー・スミス買収などの先行投資によって着実な成長を実現し、現在の中期経営計画「START 2024」でも、引き続き国内と米国事業拡大を目指している。

その柱は「国内市場におけるシェア拡大」、「米国事業の将来に向けた投資」、「新たな成長分野の開拓」の3つだ。国内市場では、2023年度までに85品目以上の新製品発売を目指し、自社生産体制の強化によって200億錠以上の安定供給を図る。米国事業については、2023年度までを先行投資期間として2030年までに600億円の収益を目指し、米国製造工場を1カ所に集約するなど、コスト抑制と品質管理強化を進めている。新規事業としては、未病対策や健康寿命延伸を目指す健康食品事業、うつ・精神病治療などを中心とするデジタル・医療機器事業、さらにALSなど希少疾患を対象とする新薬事業の3領域に300億円の等資枠を設けている。

一方の大手、1951年創業の東和薬品もまた、ジェネリック医薬品の普及拡大に大きな役割を果たしてきた。「国内ジェネリック事業の確実な成長」を目指した2020年度までの中期経営計画のもと、3年間で30成分76品目を上市してコア事業を着実に拡大、山形工場の製造設備も拡充して、岡山と大阪の3工場で115億錠を生産できる体制を実現した。現在の中期経営計画「PROACTIVE II」では、コア事業の進化を図る一方、「海外市場の拡大」、「新たな健康関連事業の展開」、「技術イノベーションと製品価値の創出」、「働きがいのある環境づくりと人財育成」を重点方針として掲げる。医薬品の安定供給が大きな社会的課題となるなか、3工場によるバックアップ体制を強化することでコア事業の進化を図り、2023年度までに175億錠の生産能力獲得を目指す。東日本、西日本それぞれに設けた物流拠点も、事業効率化とともに万一の際のバックアップ体制として機能させる。

コア事業拡大の他、同社が特に注力するのは新たな健康関連事業の展開だ。既に、健康・未病・病気の全段階で健康状態がチェックできる体制を目指して、疾病リスクを検査できる健康チェックサービス事業へ参入している。検査から得られたデータをもとに、健康寿命延伸に貢献する考えだ。

ジェネリック医薬品の安定供給は、メーカーにとって最大の使命。供給不足がかつてない規模で続き、供給不足が医薬品全体の3割近くに及ぶといわれる中、メーカーには、よりいっそうの製造・品質管理の徹底と高度化が求められる。2つの老舗メーカーのさらなる取り組みにかけられる期待は大きい。

両社の概要

サワイグループホールディングス

設立 2021年(1929年 澤井薬局創業)
本社 大阪府大阪市
代表 末吉 一彦(代表取締役社長)
資本金 100億円
従業員数 連結:2, 968名(2022年3月)
主なグループ
会社と
事業内容
●沢井製薬:ジェネリック医薬品など医療用薬品の
製造販売
●化研生薬:医療用薬品販売、医薬品製造
●メディサ新薬:沢井製薬等との間での医療用
医薬品売買
●トラストファーマテック:医療用医薬品製造
●米国:Sawai America HD、Sawai America、
 Upsher-Smith Laboratories

出典:ホームページ(会社概要、沿革)

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り40%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。