資産形成の不安を取り除き、健全な社会の一翼を担う

100年以上の歴史を背景に“超リテール証券”を掲げ、外国株の取り扱いやベンチャー企業への投資のみならず、地方創生など新領域にも積極的に事業展開を進めるアイザワ証券グループ。五代目社長の藍澤卓弥氏は徹底的に顧客に寄り添うことが新たな事業を生み出す鍵と語る。

藍澤 卓弥 アイザワ証券グループ 代表取締役社長 兼 社長執行役員CEO

斬新な取り組みを生むアイデア公募制度

1918年に創業した藍澤證券は、持株会社化に伴い、2021年10月にアイザワ証券グループとして再スタートを切った。同社は2000年に香港、台湾、韓国の3市場のアジア株の取り扱いを開始し、現在、アジアの取扱市場数と取扱銘柄数では業界トップクラス。さらに金融機関や教育機関と連携したソリューションサービスを提供するなど、他社との差別化戦略を明確にし、次々と新領域に挑んできた。

代表取締役社長兼社長執行役員CEOの藍澤卓弥氏は「証券業界は規制業界なので、規制改革で新しい取り組みの方に進まざるをえない面もありますが、当社にはもともと新しいものに取り組むことが好きな文化がありました」と話す。

斬新な取り組みのひとつが、従来の店舗スタイルを排し開放的でリラックスできる空間を目指してリニューアルした自由が丘支店だ。株式投資は資産形成の重要な手段だが、きっかけがないと証券会社の店舗は敷居が高く、入りにくい。まずは店舗に入ってもらい金融投資に触れてもらう環境をつくる、というコンセプトの下、店舗の内装や運営について若手社員が自由にアイデアを出し、それに基づき2021年1月リニューアルオープンした。結果、証券会社とは思えないお洒落な店舗が生まれた。

このように同社では定期的にビジネスアイデアを公募しており、役職にかかわらずアイデアがある社員は誰でも応募できる。常にアイデアを出せる文化が根づいているため、自由が丘支店のケースでも様々な店舗活用案が提出された。地域に住む人々の利用を促し、アイザワ証券をさらに知ってもらうことをテーマに、スマホ料金の見直しやサブスク活用術、フリマアプリや家計簿アプリの使い方など、むしろ投資以外のセミナー・イベントのアイデアが若手社員を中心に出たという。

こうした活動は一見、投資とは直結しないように思える。だが、この根底には「お客様のためになるなら、何でもやってみよう」という社風があるのだ。

2021年1月にリニューアルした自由が丘支店。地域住民が気軽に訪れられるよう、イベントなども企画されている

個人をフルサポートする総合金融サービス

コロナ禍で社会の状況が大きく変わるなか、資産形成へのニーズは確実に高まっている。『老後2000万円問題』のように、将来への見通しが立たず、若い世代を中心に国全体に不安が蔓延している。「証券会社が果たすべき役割と責任が大きくなっていると感じます」と、藍澤氏。

「我々の使命は、資産形成を通じて彼らを生活の不安から解放し、希望にあふれるこの国の未来を彼らが創造するための後押しをすることです。規模の大小にかかわらず、我々は日本の将来の一端を担っているのだという気概を持つよう常に自分に言い聞かせています」

昨今、特に対面の証券会社の役割が問われているという。子育て世代でもリタイア世代でも、正しい投資知識と判断能力を得たうえで資産形成を行うニーズがあるにもかかわらず、これまで日本には体系的な投資教育が存在しなかった。

「だから我々の日々の対応を通じてお客様の金融リテラシーを高めていきたい。それができるのが対面の証券会社の強みです。我々にとって投資教育は社会貢献などではなく、注力すべき戦略の一つではないでしょうか」

昨今、顧客の不安材料は多様化しており、投資に限らず相続問題や事業承継問題などさまざまだ。しかし、これまでそうした悩みを相談できる先は、証券、銀行、保険会社などバラバラだった。すべての悩みを信頼のおける一人のアドバイザーに相談できれば、顧客の利便性は格段に向上する。そのような包括的なサービスを中間層向けに提供する証券会社は現状存在しない。これが、アイザワ証券が目指すところだ。単に口座数を増やすような、売上追求を目的とした金融サービスの提供は行わない。目指すのは、アイザワ証券単独だけでなく、グループ全社で一人ひとりの顧客に寄り添い、地域の金融機関、教育機関、行政等とともに面でサービスを提供する『総合金融サービス』だ。

「我々のお客様の多くは地域に暮らす一人ひとりの個人です。その個人をフルサポートするために外部連携は決して欠かせません。行政主催の老後向け資産形成セミナーへ社員を講師として派遣したり、大学で金融教育の講座を開設したり、銀行で当社の商品を販売してもらったり……、何より異なる業種・視点の方々と連携する中では毎回新鮮な驚きと気づきが得られます。それが次のビジネスアイデアに繋がって、新たな事業が生まれてきました」

寄り添い、話をよく聞き、自発的に動ける人材を育成

アイザワ証券には、創業以来各地の証券会社十数社と合併を繰り返して成長してきた歴史がある。そのため、現在全国5つに分けた営業エリアの各拠点は、地域毎の特色を色濃く反映して性格もスタイルも大きく異なる。しかし、共通してどの拠点にも地域に育てられてここまできたという思いがあり、それだけに地域貢献や地域密着への拘りは強い。地域の人々の困りごとに対応でき、競争力の源泉となる人材の育成を強化すべく、同社は2020年4月に、社員が自らキャリアを選択する『キャリアデベロップメントプログラム制度(CDP)』を導入した。

「当社のCDPは、多様化するお客様のお悩みを包括的に解決できるアドバイザーを育成するための独自の仕組みです」と話す藍澤氏は、言われたことだけをやるのではなく、顧客の関心がどこにあるのか、悩みは何なのかを考え、その解決のために自発的に動く文化をこれまで以上に根づかせたいと考えている。

信頼されなければ、相談相手にはなれない。顧客からの信頼はどうすれば得ることができるのだろうか。藍澤氏は「お客様の立場になって考えること」と語る。同社ではそうした寄り添う気持ちを育む一環として、とりわけ高齢の顧客が多いことから、社員全員が『認知症サポーター』研修を受けたり、それ以外にも、アクティブリスニングやグリーフケアの研修にも力を入れているという。これからも売り切り型のビジネスではなく、顧客の人生に寄り添い、顧客の課題を解決し、手伝いできるサービスを提供していく。

「お客様の話を聞くことに尽きます。社員の話も同様です。正解はお客様や社員の中にある。熱意をもって相手の声に耳を傾けることはトップの義務だと思っています」

 

藍澤 卓弥(あいざわ・たくや)
アイザワ証券グループ 代表取締役社長 兼 社長執行役員CEO

 

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