「リジェネラティブ」という観点 環境再生に挑む酪農・漁業

サステナビリティという言葉が一般化し、事業活動での環境配慮は当たり前となっているが、最近、環境再生を意味する「リジェネラティブ(Regenerative)」という言葉が聞かれるようになった。環境再生とはどのようなことか、酪農・漁業領域での取り組みとその可能性を紹介する。

徐々に注目が集まる
「リジェネラティブ」とは

リジェネラティブ(Regenerative)は「環境再生」と訳され、自然環境をよりよい状態に再生させることを目指す考え方。現状、確立した定義はないが、比較的取り組みの多い農業分野では『土の健康』を重視しており、極力土を掘り起こさない不耕起農法や、ひとつの土地で複数の作物を輪作するなどの手法をとることが多いが、不耕起に否定的な意見もあり、一様ではない。

『土の健康』とは、土壌中の有機物や微生物の多様性を確保することを指しており、アウトドアブランドのパタゴニアではリジェネラティブ・オーガニックを掲げて、省耕起・不耕起栽培によるコットン栽培を試験的に行っている。また、重機などで大規模に土を掘り起こさず耕作を行うことで、土壌にCO2を吸収・隔離する働きもあるとされている。

ここでは、リジェネラティブを目指した酪農の取り組みと、水産業におけるリジェネラティブの可能性を見てみよう。

酪農領域での挑戦

『22世紀に続く酪農とお菓子の環境作り』をビジョンに、こだわりの素材を用いたチーズケーキ・チーズワンダーの製造・販売を手がけるユートピアアグリカルチャー。代表の長沼真太郎氏は2013年に製菓会社BAKEを創業、2017年に同社を売却し、現在はユートピアアグリカルチャーで菓子製造とともにリジェネラティブ酪農に取り組む。

長沼 真太郎 ユートピアアグリカルチャー 代表取締役

「できたてであること、しっかり手間をかけること、そしてよい原材料という3つが美味しいお菓子の条件です。前2つは自分たちの努力次第ですが、原料は生産や流通に左右されます。牛乳は安定供給などのために複数の牧場の生乳が混ぜられており、こだわった牛乳を使うためには自ら牧場をやるしかないという思いがありました」

牧酪農の様子。青草を食べることで牛乳の風味が豊かになるという(提供:ユートピアアグリカルチャー)

BAKE売却後、長沼氏は畜産業・乳業の知見を得るため、1年ほどスタンフォード大学で客員研究員として活動。現地で感じたのは、環境負荷の高さに起因する畜産・酪農への逆風と、盛り上がりをみせる代替たんぱく市場の勢いだった。

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