第6回 気候変動の負のスパイラルを止める、脱炭素と生物多様性

環境領域の研究・政策提言を行う地球環境戦略研究機関(IGES)のメンバーとともに脱炭素時代の事業環境を考える本連載。最近、経済報道などでも見られる「生物多様性」。気候変動とも関連が高く、企業にとっても見逃せないというが、ビジネスとどう関連があるのだろうか。

髙橋 康夫(地球環境戦略研究機関〔IGES〕)

CO2削減と両輪の関係にある「生物多様性」

―― 最近、気候変動対策は脱炭素だけでなく、生物多様性の保全とともに進めるべきと言われます。両者にはどんな関係があるのでしょうか。

生物多様性は、生きものの種と遺伝子の多様性、そして多様な生きものがおりなす生態系の多様性のことです。森林や海中のサンゴ礁などの生態系は、大気中の炭素のうち、人間の活動から発生するCO2の約60%を吸収していると指摘されています。生物多様性は、温室効果ガスの削減に大きく貢献しているということです。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した『1.5℃特別報告書』では、気温が1.5℃上昇した世界と2℃上昇した世界を比較しています。例えば2℃上昇するとサンゴ礁が現在の99%減少してしまうのに対し、1.5℃上昇では、70〜90%の減少に留まるとされています。これは一例にすぎませんが、気候変動による生物多様性への影響が明らかになりつつあります。

つまり、気候変動が進むと生物多様性が失われ、生態系によるCO2吸収に影響し、さらに気候変動が進むという負のスパイラルが起こる可能性があるのです。両者の関係は、相互に影響し合う「カップル」のシステムと表現され、両方に有効な働きかけが重要だとされています。

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