企業価値を最大化する人材戦略 グローバル・リンク・マネジメントが実践する「透明化経営」

2040年に経常利益1,000億円超という壮大な長期ビジョンを掲げ、全社員のスキル可視化と評価制度の完全透明化に挑むグローバル・リンク・マネジメント。同社が実践する「ブラックボックスを作らない」という革新的な経営哲学と、1人当たりの生産性最大化に向けた独自の人材戦略、そして透明化が創出する新たな企業価値について、代表取締役社長の金大仲氏に話を聞いた。

金 大仲(グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役社長)

1人当たり生産性が導く成長への道筋

2040年に経常利益1,000億円超という壮大な目標への道筋をお聞かせください。


「シンプルに言えば、1人当たりの生産性を上げることです」と金大仲社長は明快に語る。

同社の時価総額は、2021年の70億円から2024年には307億円へと約4倍に成長。この躍進の背景には、従業員数134名(2024年12月末時点)という規模で実現した高い生産性がある。

2027年には売上高1,000億円、経常利益100億円を目標に掲げ、2040年には経常利益1,000億円超というグループ方針「GLM1000」を描く。これを従業員1人当たり売上高5億円、経常利益0.5億円という明確なKPIに落とし込んでいる。

「1人当たりの生産性を上げる。そのためにエンゲージメントを上げる。そのために明確な評価制度をつくる。すべてが有機的につながっているんです」。

この構想の本質について、金氏はこう語る。「1人当たりの生産性を上げるというのは、日本全体の課題でもあります。人材価値を上げるということは、1人当たりの売上と利益を向上させること。そのために1人当たりのスキルを伸ばすことによって、人数は増えなくても成長できるというロジックを、完全に可視化することができている企業は少ない。我々はそこに挑戦しているのです」。

 

上場を契機に加速した情報開示の徹底

評価制度の透明化という革新的な取り組みのきっかけは何でしょうか。


「上場です」と金氏は明言する。2017年の東証マザーズ上場(現在、同社はプライム市場)が、同社の経営哲学を大きく進化させた。

「上場企業として情報開示が求められる中で、『どうせ開示するなら徹底的にオープンにしよう』と考えました。開示することの最大のメリットは、有言実行の文化が根付くこと。期限を決めて、定量的な目標を持つ。それを社内外でコンセンサスを得るために開示することが、組織の成長を加速させます」。

金氏は、透明性がもたらす好循環について次のように説明する。「課題があればなぜそうなのか、モニタリングした結果を踏まえ、それを新たな目標に変えて開示すれば社内にもプラスですし、投資家からも『この会社は課題を明確に認識し、改善策を迅速に実行する』という評価をいただける。開示すること自体が全部ポジティブな効果を生むのです」。

 

全社員のスキル可視化という挑戦

全部署のスキルを定量化する取り組みの進捗はいかがですか。


「現在、全体像の設計が完了し、制度の詳細を精緻化している段階です」と金氏は現状を説明する。

同社は今年度中に、新卒から社長までのキャリアパスの全体像を完成させる計画だ。全部署で必要なスキルを可視化し、点数化・定量化を進めている。

「全部署のスキルを全部可視化し、点数化、定量化する。今の会社が10個のビジネスをやっているとしたら、10個すべての部署でどういったスキルが必要か定義し、定量的に点数を設定する。そうすると、自分の今後のキャリアプランの中で、どのようなスキルをどれぐらいの期間で獲得していけばいいのか、しっかりとプランニングしてもらうことができる」。

キャリアチャレンジ制度(社内転職)とスキルチャレンジ制度(社内留学)も導入し、部署横断的な経験を積める環境を整備。執行役員の選出においても、プレゼンテーション、推薦、投票という透明性が確保されたプロセスを確立している。

「最も大切にしているのは、このプロセスを社員と共に創り上げていること。全員で議論し、全員が納得できる仕組みを構築中です。いいものを真似よう、優れた事例を持つ企業から積極的に学ぼうというのがシンプルな考え方です」。

 

「三方良し」が生み出す持続的成長

透明化に向けた取り組みは、どのような価値を生み出していますか。


「投資家も社員も、株価という客観的な指標で私たちの進化を評価してくれています」と金氏は手応えを語る。

全社員への無償ストックオプション付与や、持株会の奨励金50%という先進的な条件設定により、企業価値向上が社員の成功に直結する仕組みを構築。エンゲージメント調査を年2回実施し、継続的な改善につなげている。

2027年には平均年収1,000万円以上という意欲的な目標を掲げる。「社員は成長とやりがいを実感し、投資家は適切なリターンを享受し、社会には新たな価値を提供する。すべてのステークホルダーが幸せになれる会社、『三方良し』を目指しています」

金氏は、評価とインセンティブの関係性についても前向きに語る。「理想だけでなく、インセンティブと評価をしっかり作ることが重要です。性別や年齢を問わないのを前提として、女性の管理職も何年までにどれぐらい増やすのか、すべてオープンにすることで、組織の多様性も促進できます」。

 

変革をイノベーションの源泉に

経済環境の変化をどのように成長機会として活かしてきたのでしょうか。


「変化の時こそ、新たなビジネスモデルを生み出すチャンスです」と金氏は力強く語る。

リーマンショック時には、革新的なオフバランス開発という新たなビジネスモデルを創出。「土地を国内投資家やパートナーに持ってもらい、資金を出してもらって建設するという仕組みを確立しました。この変革が、現在の事業基盤を作る大きな転機となりました」

コロナ禍においても、新たな成長機会を見出した。「過去に取引のある機関投資家に対して今後3年間の投資計画をヒアリングした結果、日本不動産への投資予算が3.3兆円あることが分かりました。世界中の機関投資家のニーズに応えていく過程でリレーションを強化し、新たなビジネスモデルの構築を目指しています」。

「変化を前向きに捉え、新たなビジネスモデルを生み出していく。それが我々の強みです」と金氏は自信を示す。

 

日本企業の未来を拓く新たな経営モデル

御社の取り組みは、日本企業にどのような可能性を示していますか。


「人的資本経営は目的ではなく、企業価値を最大化するための戦略的手段です」と金氏は本質を語る。

同社が5月に三菱UFJ銀行の人的資本経営評価でAランクを取得したことも、透明化経営を推進している成果の表れだ。「そういった取り組みを社内で検討し、ルールを作り、スタートさせている。しかも積極的に開示しているというところを高く評価していただきました」。

今後の事業展開について、金氏は明確なビジョンを示す。「不動産領域の拡大とDX、AI含めてその領域の拡大を進めます。新たに手がける事業は、社会的インパクトがあり、マーケットが今後伸びていく、将来的なニーズがあるもの。収益性と社会課題解決を両立させ、ステークホルダー全員が幸せになる『三方良し』のビジネスを展開していきます」。

現在進行中の改革は、2025年の完成を目指して着実に前進している。「透明性の追求は、組織に新たな活力をもたらします。課題を明確にし、改善策を示すことで、組織全体が一体となって前進する力が生まれます」。

グローバル・リンク・マネジメントが進める透明化経営への挑戦は、人材を最大の資産として捉え、その潜在力を最大限に引き出す新たな経営モデルとして、日本企業の未来に希望の光を投げかけている。

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金 大仲(きむ・てじゅん)氏
株式会社グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役社長