オークションハウス対決! サザビーズ VS. クリスティーズ

芸術作品などのオークションというと、一部の富裕層だけのものと思ってしまいがちだが、最近は新規参入者も目立つなど、変化が起こりつつある。18世紀から続く、世界の2大オークションハウスの動向を見る。

伝統を維持しながらも革新を続ける
世界の2大オークションハウス

2019年末に始まったコロナ禍はあらゆる産業に深甚な影響をもたらした。オークション業界も例外ではなかったが、2023年以降はコロナ前の水準を超えるほどに回復し、活況を呈している。古今東西、美術作品のコレクションが富の象徴であることには変わりないが、昨今は投資対象としてもあらためて注目され、投資家などの新規オークション参入者が増えている。

そのオークション業界を代表するのがサザビーズとクリスティーズだ。いずれも長い歴史を持ち、創業は18世紀にまで遡る。

サザビーズの歴史は、1744年、ロンドンで書籍販売などを生業にしていたサミュエル・ベイカーが初の古書オークションを行ったことに始まる。1778年にベイカーの甥であるジョン・サザビーが事業を承継して、絵画や家具、陶磁器など取扱い品目を拡大、名声を高めていった。今日、世界40ヵ国に80拠点を展開、ニューヨークや香港など世界9都市でオークションを開催し、従来的な「ライブ」オークションの他、特にコロナ禍を契機にオンライン・オークションも増えている。

2019年にフランスのITビジネス出身者が新オーナーになったこともあり、カタログのオンライン化など事業のIT化が進み、セレブや音楽アーティストなどとのコラボレーションによるオンラインセールなど、新たな取り組みも広がっている。2021年にはNFT市場にも参入し、NFT取扱高は2023年5月時点で1億2000万ドル以上に達するなど堅調に推移する。2023年12月の香港オークションではビットコインNFTのドット絵を初出品したが、入札件数148のうち3分の2が新規参入者となるなど、デジタル・アート分野は活況だ。

一方、クリスティーズの歴史は、美術商のジェイムズ・クリスティーがロンドンで初オークションを行った1766年に始まる。その後急速に国際的な名声を確立、世界の10の重要な個人オーナー・コレクションのうち7つのオークションに関わり、いくつもの史上最高落札額を記録するなど、第一級のオークション・ハウスとなった。現在、欧米、中東、アジア太平洋の46ヵ国に拠点を持ち、ロンドン、ニューヨーク、香港など世界各都市で年間350回のライブ/オンライン・オークションを開催しており、取扱品目は美術品、宝飾品、時計、家具など80種類以上に及ぶ。

1999年、ヨーロッパのファッション企業体PPR(現・ケリング)のフランソワ・ピノー代表が持つ投資会社に買収されて以降は、新たな方向性も強化している。2022年に、アート市場におけるブロックチェーン・スタートアップなど革新的なフィンテック企業を支援するファンドを設立し、2023年には新たに設けたNFTオークション・プラットフォーム「Christie’s 3.0」のもと、ケリング傘下のグッチと共同でNFTアート・オークションを開催するなど、デジタル・アート分野での存在感も増している。

デジタル化、新規参入者増加といった世界的な潮流が大きくなるなか、250年以上の歴史を持つ2つの老舗は今、積極的に自らをアップデートしつつ、オークションハウスの新たな未来像を指し示そうとしている。

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