夢の楽器「だれでもピアノ」がつくるインクルーシブな社会

科学技術振興機構の「STI for SDGs」アワードで文部科学大臣賞に輝いた「だれでもピアノ」は東京藝術大学COI拠点とヤマハが共同開発した、自動伴奏追従機能付きのピアノだ。障がい者や高齢者でも演奏を楽しめる、インクルーシブな社会を実現する楽器である。

「だれでもピアノ」は、一本指でメロディを奏でると、自動的に伴奏とペダルが追加され、まるでプロのピアニストになったような感覚が味わえる夢の楽器だ。2015年に東京藝術大学COI拠点とヤマハが共同で開発、現在は電子キーボードをだれでもピアノ化するアプリも開発中で、社会実装が急速に進んでいる。

全国で多数の「だれでもピアノ」体験ワークショップを開催(ヤマハプレスリリースより)

障がい者の夢を形に

東京藝術大学は2011年から障がいのある人たちと芸術を通じて交流するイベント『障がいとアーツ』を行ってきた。また、2015年4月には、文部科学省及び科学技術振興機構(JST)による革新的イノベーション創出プログラム(COI)に東京藝術大学が採択され、インクルーシブアーツ研究グループが発足。障がいの有無に関わらず音楽と感動を共有できる豊かな社会を目指し、誰もが楽しめるユニバーサルな楽器の開発などを進めるために、数多くの特別支援学校をリサーチしたことが、だれでもピアノの開発のきっかけになったという。

「2015年の夏、筑波大学附属桐が丘特別支援学校の音楽授業を見学したとき、脳性麻痺で車椅子に乗った1人の女子高生が、なんとか動かせる人差し指だけで、ショパン作曲のノクターンを練習していたのです。音楽の先生が横で伴奏部分を弾きながら支援していました。少女は『本物のピアノでノクターンが弾きたい』と2年間も練習を続けていました。それを何とか支援できないかと、早速翌日、自動演奏ピアノの優れた技術を持つヤマハに連絡したのです」と、東京藝術大学新井鷗子特任教授はSTI for SDGsアワードで開発経緯を説明した。

「だれでもピアノ」は科学技術振興機構の
2021年度「STI for SDGs」アワードで文部科学大臣賞を受賞

こうして藝大とヤマハの共同研究がスタートする。桐が丘特別支援学校の協力を仰ぎつつ、一本指の動き方やペダルの操作、ノクターンの音楽的特徴を分析し、わずか5ヶ月で自動伴奏追従機能付きピアノを開発。2015年12月のイベント「障がいとアーツ」で、このピアノを使って少女がノクターンを演奏すると、社会に大きな感動と反響が巻き起こった。

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